史上初、JR・路面電車「車両デザイン交換」なぜ実現 広島「新駅ビル」だけではない深いストーリー
では、広電の車両デザインを誰に頼むか。広電にも広告などの車両ラッピングで付き合いのある地元のデザイン会社がある。しかし、「JR西と同じデザイナーのほうが、統一感が出てよいのではないかと思い直しました」と、広電でこのプロジェクトを担当した市川恭子さんが話す。そして、届けられたデザイン案を見た市川さんは、「クオリティがすごい。迷わず最初からお願いすればよかった」。
227系だけでなく5100形のデザインも大森さんが手掛けることができたのは、大森さんがたまたま関西工機整備に出向していたという面も大きい。もし、大森さんがJR西にいたら広電の車両デザインはできなかったに違いない。その意味ではタイミングも幸いした。
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元のデザインを「意訳」
大森さんが意識したのは、元の車両デザインを“意訳”することだ。元の車両デザインを長さも構造も違う車両にそのまま当てはめると、デザインのバランスが崩れてしまう。そこで、元の車両デザインを要素ごとにバラバラにして、それぞれの要素を新しい車両に当てはめていき、元の車両デザインの雰囲気を再現する。これが“意訳”の意味だ。
たとえば、227系では車端部に赤い縦ラインが描かれている。しかし、5100形では連結部ではなくドア部分を赤くすることにした。路面電車ではドア位置を強調することが重要だからだ。「意訳のデザインだが、レッドウィングの雰囲気が出ているのではないか」(大森さん)。
一方で、227系にグリーンムーバーマックスのデザインを装飾する際は、車体の下部にステンレスの地肌をあえて残した。227系の車両に同じバランスで白と緑を描くと、ホーム面の上しか見えないため緑の部分が多くなる。配色のバランスが崩れて、グリーンムーバーのように見えなくなることを危惧したからだ。
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