史上初、JR・路面電車「車両デザイン交換」なぜ実現 広島「新駅ビル」だけではない深いストーリー

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レッドウィングの登場当初はさまざまな色やデザインのJR車両が広島エリアを走っており、レッドウィングの赤はその中に埋没していた。それから10年経ち、通勤型・近郊型車両のほとんどがレッドウィングに置き換わり、レッドウィングが日常の光景になった。だからこそ、グリーンムーバーマックスの装飾をした車両がひときわ目立つのだろう。「10年前だったらここまでのインパクトはなかったかもしれません」(大森さん)。

227系 レッドウィング
JR西日本の「レッドウィング」227系(記者撮影)
【写真でもう一度】「レッドウィング」カラーの広電と「グリーンムーバーマックス」カラーのJR227系。複数案あったデザイン、ほかはどんなものだった?

そして、グリーンムーバーマックスの緑である。広電の電車の多くは緑が含まれたデザインだ。市川さんによれば、昭和20〜30年代頃からバス、ついで電車の車両に緑がアクセントカラーとして使用されるようになった。

「採用時期と色のイメージを勘案すると、原爆投下により焼け野原となった広島の地に『75年は草木も生えない』と言われた中、実際にはすぐに草木が芽吹き、復興のシンボルとなったことから、『平和・復興=緑』のイメージが結びつき、車両カラーに緑色を採用したものと推測されます」(市川さん)。広島を象徴するカラーである赤、そして緑。今回のラッピングトレインは色を通して広島市民の愛情や平和への願いをあらためて考えるきっかけにもなる。

JR西と広電「ライバル」じゃない?

ラッピングコラボトレインは、広電は2号線(広島駅―広電西広島―広電宮島口間)で運行し、JR西は山陽本線(福山―新山口間)、呉線(三原―海田市間)、可部線(横川―あき亀山間)の幅広いエリアで運行する。山陽本線の新井口―五日市間約2kmの区間は広電と線路が並んでいるため、運が良ければ2つのラッピングトレインが並んで走る姿が見られるかもしれない。

ちなみに、冒頭でJR西と広電はライバル関係にあると書いたが、齋藤さんも市川さんも「それは違う」と明確に否定した。両線の並走区間にある踏切の一部は両社が共同管理しており、振替輸送でも協力関係にあるという。さらに、両社の定例会の後では「決起集会」と称した飲み会が頻繁に行われているそうだ。

「お客様から『JR西と広電はこんなに仲良しだったのですね』という反応もあった」と市川さん。つまり、今回のラッピングコラボトレインには両者の良好な関係を示す効果もあったわけだ。JR西は2026年度に行われる全般検査まで運行する予定。広電は「当面の間」としつつも「JR西と呼吸を合わせながら決めたい」という。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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