辻仁成「人生の後半、子犬と生きる事について」 人間の孤独を癒やしてくれる素晴らしい生き物

ぼくの元にやって来た子犬のミニチュアダックスフンド。名を三四郎という(写真:辻仁成さん提供)
“犬は友だち、家族、道しるべ。息子が巣立ったあと、ぼくの人生にそっと寄り添う。”
パリ在住の作家、辻仁成さんのもとにミニチュアダックスフンドの三四郎がやって来たのは2021年冬のこと。生後4カ月の子犬が3歳の誕生日を迎えるまでの日々。辻仁成『犬と生きる』より抜粋・構成してお届けします。
ふいに、一匹の子犬が出現をした
1月某日、今日は朝からずっと「ご縁」について考えていた。ぼくが今、この田舎で暮らしているのも、複雑なようで実はシンプルな、いろいろな人々を介したご縁が組み合わされての結果である。
二股の道があり、左に行った時に出会うものと、右に行った時に出会うものが大きく違うように、人間は毎日、毎瞬間、目に見えない力によってご縁の機会を得たり、失ったりしているのである。
ご縁の瞬間を見逃すこともあれば、追いかけられて無理やり引きずり込まれることもある。ぼくは常に「来るもの拒まず、去るもの追わず」の精神でやってきた。そして、今日、嵐が過ぎ去ったので午後、海辺を歩いていたら、ふと頭の中を過ったものがあった。ところが、その次の瞬間、何かがぼくの目の前を現実にものすごい勢いで通過していったのだ。
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