「家電のない」ソニーは今、どんな会社なのか エンタメとEV進出がばかり注目されるが…

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従来なら家電や放送機器に使われていた技術を、さまざまなエンターテインメントに活用し、結果として産まれたコンテンツを多くの人が楽しむことができれば、ソニーグループのビジネスが大きくなる……という考え方である。

「スマホ」になったソニーパーク

「でもそれって、いわゆるB2Bビジネスとどう違うの?」

そんな風に思う人もいそうだ。

どう説明すればいいのか……そんな風に考えながらある取材に来たら、大きなヒントを獲られた。

ソニーグループは1月26日に「Ginza Sony Park」を正式オープンした。1966年にオープンした「ソニービル」を、2017年から長い時間をかけて「再構築」した存在である。

1月26日に正式オープンした「Ginza Sony Park」(筆者撮影)

このプレス内覧で面白い話が聞けた。

Ginza Sony Park Project主宰で、ソニー企業株式会社 代表取締役社長 兼 チーフブランディングオフィサーの永野大輔氏は、ソニービルとGinza Sony Parkの関係について次のように述べている。

Ginza Sony Park Project主宰の永野大輔氏。背景にあるソニーロゴの装飾は、ソニービルについていたオリジナルを再利用したもの(筆者撮影)

「ソニービルは電話だとすれば、Ginza Sony Parkはスマートフォンなんですよ」

これだけを聞くと意味がわかりづらいが、よく聞いてみると非常に面白い比喩だ。

「過去のソニーはエレクトロニクスが事業のほとんどを占める会社でした。それもあって2010年代、ソニーの業績が悪化すると、ソニービルは『買われないソニーの象徴』などと言われました。それがビル立て替えに至った1つの理由でもあります」と永野氏。

「過去のソニービルは、ショールームとテナントでした。しかし、Ginza Sony Parkにテナントは入れません。公園をコンセプトとしたプラットフォームになっていて、常に中身を入れ替えていきます。スマホがアプリを入れ替えて機能を変えるようなものです。今は皆、街に来るというよりもコンテンツで集まります。Sony Parkもアーティストとのアクティビティを中心に構成しています。もっと年代の違うアーティストのコンテンツをやったら、若い人々でなく別の層に訴求できるでしょう」と同氏は語る。

Sony Park展
Ginza Sony Parkでは「Sony Park展 2025」として、人気アーティスト6組とソニーグループの事業体がコラボレーションしたアクティビティを展開(筆者撮影)

ソニーグループの業態は複雑化した。そこはコンテンツが軸になるが、必ずしもコンテンツだけを売っているわけではない。コンテンツを支えるものもまたビジネスだ。そうした変化を「銀座にある建物」に仮託した時、その存在がスマホ的になった……というのは面白い解釈ではないだろうか。Ginza Sony Parkの役割が「わかりにくくなったソニーグループを、若い層にアピールすること」というのもよく理解できる。

今後、ソニーグループのビジネスの成否を理解するにも、我々の側の認識のアップデートが必要だ。

西田 宗千佳 フリージャーナリスト

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にしだ むねちか / Munechika Nishida

得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、『アエラ』『週刊朝日』『週刊現代』『週刊東洋経済』『プレジデント』朝日新聞デジタル、AV WatchASCIIi.jpなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。著書に『ソニーとアップル』(朝日新聞出版)、『漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち』(講談社)、『スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場』(アスキー新書)、『形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組 』『電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ』『iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏』(すべてエンターブレイン)、『リアルタイムレポート・デジタル教科書のゆくえ』(TAC出版)、『知らないとヤバイ! クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?』(共著、徳間書店)、『災害時 ケータイ&ネット活用BOOK 「つながらない!」とき、どうするか?』(共著、朝日新聞出版)などがある。

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