近鉄奈良駅、地下に広がる「ターミナル」の特異性 徒歩数分でシカに会える、外国人にも大人気

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線路の地下移設は1968年2月3日に着工。「既設の線路の直下に新たに線路を敷設する工事のため、既設の線路やホームをH型鋼杭と鉄桁によって支持し、地表から掘削する開削(オープンカット)工法を採用した。通常、この規模の工事は3年の期間を要するものであったが、日本万国博覧会の開幕まで約2年しかなかったため、昼夜兼行で工事が進められた」(『近畿日本鉄道100年のあゆみ』)。

近鉄奈良駅地下ホーム 新大宮方からの視点
新大宮駅方から見た近鉄奈良駅のホーム。地下2階の4面4線(記者撮影)

線路の地下化に伴い油阪駅は廃止され、代わりに西側に設置されたのが新大宮駅。1969年12月9日、地下の奈良駅は新大宮駅と同時に開業した。翌1970年3月に「近鉄奈良駅」に改称。同年地上駅跡にオープンした8階建てのターミナルビルは、新宿駅西口広場などを手掛けたことで知られる坂倉準三が設計した。当時は6~8階に奈良ホテルの別館が入っていた。

いまは外国人観光客でいっぱい

駅はその後も進化を続けている。さらなる輸送力の強化に伴い、1988年に1・2番線が10両編成に対応する長さのホームになった。2016年10月には春日大社の式年造替を前に地下1階コンコースの床や天井、柱の美装化といったリニューアルを実施した。2022年12月には副駅名として「奈良公園前」を追加、駅名標にシカのイラストを添えた。

近鉄奈良駅構内 外国人観光客
改札は地下1階。外国人観光客から出口や乗り場をひっきりなしに尋ねられる(記者撮影)
近鉄 特急「あをによし」奈良駅停車中
観光特急「あをによし」も外国人観光客に人気ですぐに満席になるという(記者撮影)
【写真をもっと見る】世界各国の観光客が利用する近鉄奈良駅、駅構内はいまや日本人より外国人のほうが多いかも

須合駅長は「以前はもっとがらんとした印象の駅でしたが、春と秋の遠足シーズンには奈良公園を訪れる小学生など学校の団体がいっぱい並んで、広いコンコースが役に立ちました」と振り返る。

現在は世界各国から訪れる外国人観光客であふれる近鉄奈良駅。「観光地にある近鉄の駅の中でもとくにインバウンドの対応をすることが多いです。アジア系の人に『トラック、ナンバー1』などと英語で説明すると『私、日本人です』と返ってくることも」(須合駅長)。1970年の万博開催を機に地下化された同駅にとっては、2025年の大阪・関西万博も新たな転機になるかもしれない。

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橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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