「Xへの不適切投稿」で見えてくる看護師の"問題" 「医師や患者への不満」をつづった裏にあるもの

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そしてもう1つお伝えしたいのは、看護師の仕事は「感情労働」という一面があるという点です。

患者が治療や療養をしているなかで抱える不満や不安、怒りなどのストレスは、最も身近である看護師に向けられることが少なくありません。

患者から叩かれるなどの暴力を受ける、セクハラを受ける、患者家族から心ない暴言を浴びせられるといったことも、筆者が知る現場ではよく聞く話です。

しかし看護師は、そのようなときにも自身に向けられた怒りを受け入れ、我慢するといった対応が求められてきました。

このように、看護師の仕事は、感情の表出や抑制をコントロールすることが労働の大きな要素となる「感情労働」の1つとされているのです。感情労働は、人々と面と向かって、あるいは声を通しての接触があり、仕事のなかで感情が重要な要素となっているものを指し、感情が商品価値を持つとされます。

看護師には、「患者が亡くなったときに泣いてはいけない」「患者に腹が立っても怒りを示してはならない」といった職業倫理があり、自身が持つ感情とは別の「適切な感情」が求められます。

また、キャリア教育上そのような評価はないものの、先輩からは「泣かなくなったら一人前」と陰で評価されることもあります。その結果、自分の感情を押し殺して仕事をする看護師もいて、バーンアウト(燃え尽き症候群)の要因の1つとなっています。

いろいろと書きましたが、このような状況下で看護師は日々の業務と向き合っているのです。

もちろん、看護師にとって患者が回復することは大きな喜びであり、仕事を続けるモチベーションになっていることもまた事実です。さらに、病棟で経験した看護実践を携えて、専門性を獲得し、さまざまなフィールドで活躍する看護師も増えています。

知ってほしい「看護師が抱える問題」

今回投稿された内容を、決して擁護するわけではありません。しかるべき対処が必要になる問題だと筆者は考えます。

しかし、これを機に看護師が抱える問題についても、多くの人たちに知ってもらいたいと感じます。

超高齢社会を迎え、2040年問題(65歳以上の高齢者が国民の3割を占める)が迫りくる現在、病気を抱えながらも最期まで地域で暮らせる社会の実現に向けて、看護師も医療従事者の一専門職として、重要な役割を担っています。

社会がそのことを理解すれば、健康で長生きすることが重視される時代のなかで、健康増進・健康回復・疾病とともに生きていく、といったことがより可能になるのではないでしょうか。

高山 真由子 N direction代表、看護ジャーナリスト

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たかやま まゆこ / Mayuko Takayama

慶應義塾看護短期大学卒業後、看護師と並行して看護ライターとして活動開始。東海大学健康科学部看護学科に編入学しジャーナリズムを副専攻したことを機に、早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコースに進学し看護ジャーナリズムの開拓を目指す。修了後は看護師・保健師の仕事と看護医療ライターの活動を続け、医療系オウンドメディアの編集者を経て2023年1月独立。現在もさまざまな医療現場で働きながら「ペンの力で看護を変える」をモットーに取材執筆活動をしている。
X(旧Twitter):https://x.com/Mayu_Ndirection
HP:https://fori.io/mayuko-takayama

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