50年以上実現せず「奥羽新幹線・羽越新幹線」の今 「本当に必要としているのは山形県だけ」のワケ

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・特急いなほ……1編成あたり最大428席×14本(7往復)=5992席
・ANA 羽田空港〜庄内空港……1便あたり166席×10本(5往復)=1660席
・高速バス 酒田・鶴岡〜東京(夜行便)……1台あたり30席×6本(3往復)=180席

これらに合計すると1日8000人弱となるが、利用率を60%前後と考えても利用者数は1日5000人程度。羽越新幹線を実現するためには、あまりにも小さな市場である。

フル規格建設で失われるミニ新幹線のメリット

奥羽新幹線は福島〜新庄間ではミニ新幹線の山形新幹線として運行されており、これをフル規格に置き換え、さらに新庄駅から秋田駅への延伸となるが、新庄駅から先の区間はほとんどが秋田県内となり、先程も触れたように、秋田県が前向きに取り組むとは考えづらい。

そして、山形新幹線をフル規格の奥羽新幹線に置き換えた場合、山形新幹線停車駅である高畠駅、かみのやま温泉駅、天童駅、村山駅、大石田駅には奥羽新幹線の駅が設置されない公算が高い。

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これらの駅がある自治体は、首都圏とのダイレクトアクセスを失うことになり、大幅な利便性低下が予想される。また、ミニ新幹線とはいえ、「新幹線停車駅」の看板を失うことは、自治体としての存在価値にも関わることであり、簡単に容認できることではない。

東京〜山形の旅客流動では、現状でも山形新幹線がシェア98%と圧倒しており、十分機能している。さらに、山形新幹線でも板谷峠での防災、高速化をはかる米沢トンネル(仮称)建設が計画されており、これが実現すれば、東京〜山形で約10分の短縮と、フル規格にせずとも高速化が図れるのである。

このように、現時点では奥羽新幹線、羽越新幹線の必要性は極めて乏しいといえる。

これらの新幹線の建設の可能性があるとすれば、国が物流の安定化、冗長性を向上するため、貨物新幹線の実現に向けて動き出す……そのくらいの国家的なプロジェクトが必要であろう。

鐵坊主 鉄道解説系YouTuber 鉄道アナリスト

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てつぼうず / Tetsubouzu

1968 年生まれ。2020年11月にYouTube チャンネルを開設。鉄道を中心とする日本の地域交通のあり方について鋭い視点で分析・解説し、人気を集めている。

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