新幹線の線路点検、JR東「新型メンテ車」の実力は? 徒歩の目視検査から時速70kmでセンサー監視
グリーン1台とレッド4台の計5台を使ったスマートメンテナンスは、JR東日本の新幹線全線だけでなく、将来はJR西日本やJR北海道などほかのJRへも展開される可能性がある。
保守用車と分析システムを合わせた投資額はおよそ50億円。これに対する効果として、「高精細なデータを取得でき、効率のよくない修繕をしなくてもすむのでコストダウン効果は大きい」と手代木マネージャーが話す。
しかも、スマートメンテナンスの導入により将来的には目視での作業は約50%削減し、検査頻度は最大12倍に増やすことが可能になるという。目視での作業を全廃しないのは、「分岐器の入り組んだ部分などカメラの死角となる場所は目視でないと確認できないため」という。
「East i」は今後も活用
新幹線において地上設備の検査を行う車両といえば、JR東海の「ドクターイエロー」がよく知られている。JR東日本にも「East i(イーストアイ)」の愛称を持つ検査車両が2001年から導入されている。E3系をベースに開発され、高速走行しながら架線や軌道の状態を測定する。
なお、JR東日本によると、イーストアイは今後も運用が続けられる。架線の状態を測定するという独自の役割があるほか、線路の測定については設備や材料に応じてスマートグリーンとすみ分けて活用する。
人手による夜間の線路メンテナンスは過酷な作業である。人々が寝静まった深夜に関係者用に設けられた門扉を抜けて高架にある線路に入り、歩いて状態確認を行う。新幹線の線路が道路と並走しているとは限らない。目的地に辿りつくだけでも一苦労で、「点検作業の7~8割は移動時間に費やされる」という声も聞く。JR東日本はスマートメンテナンスの導入により、技術者の負担が軽くなり、データ分析作業に注力できると期待する。
JR東海もドクターイエローによる線路の計測のほか、技術者が徒歩で線路を点検しているが、営業車両に搭載可能な「軌道材料モニタリングシステム」を開発し、現在は耐久性など実用化に向けた検証中。2027年度の導入を目指す。
開業から60年を迎えた新幹線は、1964年には考えられなかったICT技術を用いて、さらなる安全性の向上、コスト削減、労働力不足の解消に向かって動き出している。
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