史上初の「母娘レーサー」、直接対決の舞台裏 母に憧れた娘、ボートレース界に飛び込む!

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今年5月にボートレーサーとしてデビューした大山千広さん(19歳)

母の博美さんは、当時高校生だった娘に「レーサーになりたい」と打ち明けられたとき、「反対はしなかったけど、賛成もしなかった」と言う。「どうしたものかと思いましたよ。まずは試験に受かることが難しいので、そこから」と、冷静に受け止めていた。

そんな母の心配をよそに、千広さんは第116期生として約42倍の難関試験を突破し、プロのボートレーサーや審判員を養成する名門校、福岡県の「やまと学校」に入学。1年間、朝6時の起床から夜10時の消灯まで徹底的に管理される厳しい訓練に耐え、卒業した29名のうち上位3名に入る好成績を残した。

博美さんは「合格したのはすごいと感動しました。私がデビューしたときに比べると、子どものほうがすごく頑張っている。その気持ちを持ち続けて、まずは一人前になってほしい」と力を込める。とはいえ、心配はないかと話を向けると「期待やうれしさよりも、心配の方が大きいですよ」と母心をのぞかせた。

「まだ負けないが、いつか上に行ってほしい」

それでも、娘が奮闘する姿を見ているうちに、博美さんの気持ちは少しずつ変わり始める。

「学校に入ってからは卒業してほしい、卒業して選手登録したらさらに頑張ってほしいと思うようになりました。今は、試行錯誤しながら本人の目指すレースを見つけていってほしいと思っていますね。

私自身の選手としての目標は、50歳までレースに出ることでしたが、せっかくこの子が選手になったので、もうしばらく頑張りたい。まだ娘には負けないと思っていますよ。とはいっても、娘にはいつか私より上にいってほしい気持ちもありますが」。

一方、5月にデビューを果たした千広さんは「今はボートに乗ることがとても楽しい。できなかったことができるようになる、そこにおもしろさを感じます。今期の目標は、まずB1に上がること。仕事のことを母に聞けるので心強い。せっかく選手になれたのだから、母に選手になってよかったと思ってもらえるように精一杯頑張りたい」と柔らかい笑顔で語った。

8月、福岡の「お盆特選レース」で初の「母娘直接対決」が実現した。レース前には博美さんが「いつか一緒に走れたらいいなと思っていたけど、こんなに早いとは。子どもが仕事する姿を間近で見ることができて、自分の働く姿も見てもらえるのは幸せ」と話し、対する千広さんは「心の準備はできている。緊張はしていない」と精神力の強さを垣間見せた。

レースの結果は博美さん2着、千広さん6着。母に軍配が上がった。

また大山親子は、9月10日からボートレース芦屋(福岡)で開催された「G3オールレディース マクール杯」にもそろって出場。今回は直接対決とはならなかったが、母娘が同じ土俵で戦う機会は着実に増えている。

母に憧れてボートレース界に飛び込んだ千広さんと、先輩としてまだまだ負けられない博美さん。これからの母娘にもぜひ注目したい。

佐々木 恵美 フリーライター・エディター

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ささき えみ / Emi Sasaki

福岡市出身。九州大学教育学部を卒業後、ロンドン・東京・福岡にて、女性誌や新聞、Web、国連や行政機関の報告書などの制作に携わる。特にインタビューが好きで、著名人や経営者をはじめ、様々な人たちを取材。

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