住友商事がスーパー「サミット」に情熱を注ぐ意図 一方で丸紅はひっそりスーパーから撤退

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こうした顧客の気持ちを高める売り場づくりを「情緒的価値」として経営の重点に掲げてきた。

例えば、サミットの店舗にいる案内係は井戸端会議のように来店客と会話するという。

「手書きのポップなども工夫を凝らしている。よい商品を置けば売れるわけではなく、伝え方が大事」(竹野氏)

情緒的価値と並んで重視するのが「機能的価値」である。その柱となるのがDX(デジタルトランスフォーメーション)やデータ活用だ。

住友商事からの出向者を中心に組成されたDX専門チームを軸に、キャッシュレス決済やセルフレジの導入を進めてきた。AI(人工知能)による効率化も、住友商事とサミットが一体となって取り組む。

昨年4月には従業員の作業割り当てでAIを導入。ベテランチーフが表計算ソフトで60分以上かけて行っていた作業は1分に短縮。来店予測や部門別売り上げ予測も実証実験を重ね、今年4月から本格運用が始まった。

サミットでDXを推進する山元淳平・国内リテイルユニット長は「AIを導入して部分的に効率化できても、オペレーション全体が効率化されて売り上げや利益が伸びなければ意味がない。全体最適が非常に重要だ」と強調する。

顧客データは暮らしのデータ

サミット事業を含む流通関連部門は、住友商事内でも注力事業に位置づけられている。

「サミットの顧客データは、暮らしのデータそのもの。スーパーは物を売り買いするだけの場所ではなく、情報集積の場所にもなる。スーパーという産業の定義が変わってくるかもしれない」と前出の竹野氏は力を込める。

住友商事は「イトーヨーカ堂」統括会社の買収に名乗りを上げ、サミットとの相乗効果を狙う。

生き馬の目を抜くスーパーの業界で、総合商社らしい「総合力」で勝ち抜けるか。住友商事の試行錯誤は続く。

森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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