「金王朝」の維持が最優先、独裁が続く北朝鮮

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 だが、開放が急激に進むことはないとみられる。北朝鮮指導部にとって、深刻な経済状況から来る国民の動揺は管理可能だが、韓国や米国など国外からの圧力や経済制裁は脅威と映る。下手に外貨を受け入れて外国からの影響を受けるより、当面は国民がいくら苦しくても強硬的な外交政策を続ける可能性が高い。「韓米が考えているような改革・開放路線は簡単には採らず、核も手放すことはないだろう」(同関係者)。

中国との関係についても「現状を維持したほうが安全保障の観点から中国の国益にかなう」と、中国側の北朝鮮関係者は口をそろえる。中朝国境の羅先や黄金坪といった北朝鮮の経済特区は、中国式の経済開放をお手本としたものだが、「インフラ整備や資源獲得など、中国が急速に援助を拡大する方針でもない」(中国外務省関係者)。

一方、韓国では米中主導で北朝鮮の開放政策が進むことに対して危惧する向きがある。独立系シンクタンク韓半島先進化財団の朴世逸(パクセイル)理事長は「北朝鮮問題は韓国こそが最大の当事者であり、地政学的にも北朝鮮が中国との関係を深めていくのは好ましくない」と指摘する。

それよりは、「韓国が中心となって北朝鮮内部の開放勢力を支援する。中国には韓国主導での統一を納得させ、米国には北朝鮮に核を放棄させるよう、国際社会を巻き込んで動くべき」と、朴理事長は提案する。韓国が南北統一に対してより主体的になれば、中国を抑えて、東アジアでより盤石な地位を確立しやすくもなると見る。

金正日氏の死で新体制を迎える北朝鮮。金王朝維持の姿勢が強まる中、開放へ導けるかは韓国の手腕によるところも大きい。

(福田 恵介 =週刊東洋経済2012年1月14日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

 

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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