「#MeToo」追放セレブ、その後も続く苦難の日々 無罪となったケビン・スペイシーもマイホームを失う
それから7年も経つ今、彼は、復帰の機会を狙っているのだろう。『The Performance』は、1930年代後半、ベルリンでヒトラーのためにパフォーマンスをすることになったユダヤ系アメリカ人ダンサーの葛藤を描く、シリアスな映画。演技とタップダンスの見せ場がたっぷりで、俳優としても美味しい役だ。
原作の映像化権を「#MeToo」のずっと前に買っていたのも(騒動の後だったら売ってもらえなかったはず)、監督できる人を姉に持っていたのも、幸運だった。
予算は非常に限られているだろうが、『アントラージュ』でアワードキャンペーンの経験がある彼は、賞の投票権を持つ人たちを対象にロサンゼルスとニューヨークで何度か上映会を組んだり、映画の視聴リンクを送ったりして、業界内で口コミが広がることに期待をかけている。
完全復活のケースは見当たらない
だが、たとえこの作品を重要な人たちに見てもらえたとしても、昔のようにメジャーネットワークやHBOからオファーが来るかというと、かなり疑問だ。「#MeToo」以後、性加害問題で追放された男性が完全にキャリアを復活させた例は、ひとつもない。複数の民事と刑事裁判すべてで無罪となったケビン・スペイシーですら、苦しんでいるのである。
今年6月に出演した配信のインタビュー番組で、スペイシーは、「オファーをくれる人はたくさんいるのだが、話は進んでも、トップの誰かが必ずストップをかけるのだ」と嘆いていた。とりわけ大きい会社は、疑いが晴れても、被害を受けたと言っている人がいる以上、近寄らないほうがいいと用心するのだ。
「#MeToo」以後、スペイシーが出演したのは、フランコ・ネロが監督したイタリア映画『The Man Who Drew God』、やはりイタリアで撮影され、今月のカイロ映画祭で上映された『The Contract』、アメリカ映画だがスペイシー以外有名人が出ていない『Peter Five Eight』など、誰も知らない映画のみ。
2018年に公開された『ビリオネア・ボーイズ・クラブ』、Netflixが配信することになっている『Gore』は、「#MeToo」前に撮影されたものだ。
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