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「シグナル」闇バイトに悪用されるアプリの正体 徹底したプライバシー保護姿勢が生まれた背景

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  • 小林 雅一 KDDI総合研究所リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授
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これらを憂慮して、政府関係者の中には「シグナルのプライバシー(利用者)保護は行き過ぎだ」と考えている人は少なくないようだ。「エンドツーエンドの暗号化」など技術面はとにかく、「メタデータの消去まで踏み込む必要はあるのか?」ということだ。

シグナル財団がここまで徹底して利用者あるいはその個人情報を保護しようとする背景には、いわゆる「監視資本主義」あるいは「国家・企業監視」など昨今の産業界を取り巻くトレンドがある。

これらはグーグルやフェイスブックなどIT企業が大量の個人情報を取得し、それをベースにターゲット広告を打って巨万の利益を稼ぎ出すことや、あるいはそれらのIT企業が政府の要求に応じてユーザー情報を提供したりすることーーたとえば、かつてスノーデン氏が暴露した「プリズム」など、政府と企業が共同で国民らを監視するプログラムーーを指している。

プライバシー保護の姿勢はイデオロギーの領域

このように個人のデータが商業的に利用されたり、政府から不当に監視されたりすることがないよう、シグナルは徹底したプライバシー保護の体制を敷いていると見ることができる。それは強固な信念、あるいはイデオロギー(政治信条)の域に達しており、その分だけ融通が利かない。

今回の闇バイト強盗事件など犯罪にシグナルが使われた場合には、「シグナル財団は利用者のメタデータなどを警察に提供すべきだ」と考える人も少なくないと見られるが、おそらくそうした臨機応変で柔軟な対応は彼らにとって信条的、そもそも原理的に極めて難しいはずだ。

とはいえ、2021年1月6日に起きたアメリカの連邦議会襲撃事件で、FBI(連邦捜査局)はシグナルでやりとりされたメッセージを証拠に極右の民兵組織「Oath Keepers」に所属する一部容疑者を逮捕したと報じられている。

本来データは残されていないはずなのに、どのようにして証拠となるメッセージをFBIが入手したのかはいまだに謎とされる。この事例を見る限り、シグナルを使った指示役などの犯人を警察などの捜査機関が割り出すのは絶対に不可能とまでは言えないようだ。

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