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「シグナル」闇バイトに悪用されるアプリの正体 徹底したプライバシー保護姿勢が生まれた背景

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  • 小林 雅一 KDDI総合研究所リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授
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これらを中心とする「ウィスパー・システムズ」という通信ソフトをアンドロイド携帯向けのアプリとしてリリースした。これが当時、北アフリカ諸国を席巻した市民革命「アラブの春」で反体制派やカタール「アルジャジーラ」など報道関係者の通信手段として用いられるなど、その高い情報の秘匿性はたちまち世界的な評判となった。これによってマーリンスパイク氏は情報セキュリティや暗号化ソフトの分野で一躍名を上げた。

フェイスブックのアプリにも採用

やがてサンフランシスコに舞い戻った彼はウィスパー・システムズを営利ビジネス、つまりスタートアップ企業として立ち上げた。これに目をつけたツイッターが同社を買収し、これとともにマーリンスパイク氏はツイッターのセキュリティ開発責任者として働き出した。

しかし利益を追求するツイッターとユーザーのプライバシー保護を最優先するマーリンスパイク氏は最初からそりが合わず、結局彼は2013年にツイッターを退社。それと同時に同社の持ち株を約100万ドル(1億円以上)で売却した。

マーリンスパイク氏はこの金を元手に、冒頭のオープン・ウィスパー・システムズという非営利団体を立ち上げ、そこで開発した暗号化技術などの通信ソフトを誰もが自由に使える「オープン・ソース」として提供する道へと踏み出した。

この団体はアルジャジーラ関係者らから約50万ドルを寄付されるなど、総額数百万ドルの資金を集め、これによって十数名のソフト開発者を採用。彼らはマーリンスパイク氏を中心に、かつて同氏が開発して高い評判を得た「TextSecure」と「RedPhone」という暗号化ソフトを進化・合体させ、2014年に「シグナル」と呼ばれる秘匿性の高い通信ソフトを開発するに至った。

シグナルは当初、iPhone向けのアプリとしてリリースされた。が、マーリンスパイク氏はより多くのユーザーにこの通信ソフトを使ってもらうため、当時若者を中心に人気のあったメッセージングアプリ「WhatsApp」の共同創業者ブライアン・アクトン氏らに働きかけ、シグナルの技術をWhatsAppに組み入れることに成功した。

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