「シグナル」闇バイトに悪用されるアプリの正体 徹底したプライバシー保護姿勢が生まれた背景

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

これによってシグナルの利用者数は一挙に10億人以上へと膨れ上がったが、実は当時WhatsAppのユーザーらはそれに気付くことはなかった。つまり無意識のうちに、こうした高度な暗号通信ソフトを使っていたことになる。

それから間もなくWhatsAppはフェイスブックに約190億ドル(約2兆円)で買収され、メッセージングアプリやSNSの基盤技術としてシグナルは数十億人ものユーザーから使われるようになる。

あのスノーデン氏からもお墨付き

一方で、「シグナル」という独立した通信アプリとしても提供され、それは当時エドワード・スノーデン氏から「私は普段のコミュニケーションでシグナル以外は使わない」というお墨付きをもらったほどである。

スノーデン氏は2013年にアメリカのNSA(国家安全保障局)がグーグルなど巨大IT企業とともに世界中のインターネット利用者を監視していた「プリズム」と呼ばれるプログラムを暴露したことで一躍有名になった。同氏に高く評価されたことから、シグナルは暗号化など秘匿性の高い通信ソフトとしての評判が確立された。

ところが2018年、イギリスの選挙コンサルティング会社「ケンブリッジ・アナリティカ」がフェイスブックから100万人以上の個人情報を不正に取得し、2016年のアメリカ大統領選挙や、イギリスのEU離脱(ブレクジット)を問う国民投票などで有権者へのターゲット広告に悪用していたことが発覚した。

この事件に抗議してアクトン氏はフェイスブックを退社し、2018年に自己資金の5000万ドルを投じてマーリンスパイク氏とともに非営利団体「シグナル財団」を設立。その初代CEOにはマーリンスパイク氏が就任した。これを契機にシグナルの開発は一層加速し、異例と言えるほど強固なセキュリティとプライバシー保護機能を発達させた。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事