「シグナル」闇バイトに悪用されるアプリの正体 徹底したプライバシー保護姿勢が生まれた背景

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シグナルは今ではiOS、アンドロイド、ウィンドウズ、マッキントッシュ、リナックスなど多くのプラットフォームで利用可能だ。

マーリンスパイク氏は2022年にCEOを退任し、今はシグナル財団の理事として在籍している。同氏に代わって社長に就任したメレディス・ウィテカー氏と会長のアクトン氏が現在、シグナル財団を共同で経営している。その経営資金はユーザーや大口支援者からの寄付などで賄われている。

ウィテカー氏は以前、グーグル社員として公開データの活用方法などを研究していたが、同社が大量の個人データをAI開発など商業目的に利用する姿勢に疑問を感じ、グーグルを退社してプライバシーを最優先するシグナルに加わったとされる。

「プライバシー至上主義」を逆手にとって悪用

現在のシグナルは「エンドツーエンドの暗号化」など強力なセキュリティ機能で知られるが、その技術はフェイスブック(現メタ)の「WhatsApp」や「メッセンジャー」、さらにグーグルのチャットなどにも搭載されている。従って、こうした技術的側面だけを見るなら、通信の秘匿性を求めるからといって必ずしもシグナルを利用する必要はない。

しかしセキュリティ専門家の多くはそれでもシグナルを推奨している。その主な理由はシグナル財団の徹底したプライバシー管理体制にある。たんにメッセージを暗号化するだけではなく、シグナルの利用者を特定する電話番号などのID(識別情報)や暗号解読用の鍵情報など、いわゆる「メタデータ」と呼ばれる重要情報をサーバーから(通信終了後に)自動的に消去してしまうのである。

このため、後から警察など政府機関がシグナル財団に利用者情報などの提供を求めたとしても、原理的にそれに応じることはできない。提供したくても情報は残っていないからだ。

これら高度なセキュリティ技術と徹底した利用者保護の姿勢が評価され、シグナルは世界中のジャーナリストや人権団体、あるいは独裁国家における反体制派や一部の政治家らが秘密情報をやりとりするために利用している。

だが、一方でシグナルはテロリストや麻薬密売人など犯罪者間の連絡、あるいは児童ポルノ画像の共有などさまざまな悪事にも利用されている。今回の「闇バイトによる強盗」事件もシグナルが悪用された典型的ケースと言えるだろう。

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