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「シグナル」闇バイトに悪用されるアプリの正体 徹底したプライバシー保護姿勢が生まれた背景

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  • 小林 雅一 KDDI総合研究所リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授
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彼の母親は秘書やパラリーガル(法律事務職)などの仕事で生計を立てていたが、家計にゆとりがあったとは言えないようだ。

子ども時代のマーリンスパイク氏は当時通っていた初等学校の図書館に置かれていたパソコン「アップルⅡ」を使って独学でプログラミングを学び始めた。地元の高校に通う頃には、放課後にソフト開発会社で働いて収入を得るほど、腕前が上がっていた。

モクシー・マーリンスパイク氏。写真は2017年にサンフランシスコで開かれたテックイベントで登壇した時の様子。当時は、「ウィスパー・システムズ」というメッセージングアプリの企業のCEOを務めていた(写真:David Paul Morris/Bloomberg)

高校卒業後、カリフォルニアへ

一方、学業にはほとんど関心を示さなかった。高校をギリギリの成績で卒業するとすぐに家を出て、インターネット・ブームに沸く西海岸のシリコンバレーに向かった。1999年頃からサンフランシスコのベイエリアにある廃墟と化したビルに勝手に住んで、ソフト開発会社でプログラマーとして働き始めたとされる。

この頃の彼はヒッチハイクをして放浪の旅に出たり、サーフィンをするなど自由な生活を楽しんだが、その一方で警察に代表される体制側への反感を募らせていった。

ベイエリアを巡回パトロールする警官から嫌がらせを受けたり、自身の住所として言わば不法占拠していた廃墟ビルからも追い出された。また当時の仲間たちと共同所有していた自動車も警察に勝手な理由で押収されてしまったという。

こうして現実社会から締め出されるうちに、彼はインターネットのようなサイバー空間に居場所と救いを求めるようになった。これが後にネット上で強固な暗号化とプライバシー保護機能を備えた通信ソフトを開発する動機につながっていったと見られている。

2008年、ペンシルベニア州ピッツバーグに移り住んだマーリンスパイク氏は暗号化などセキュリティ・ソフトの開発に没頭。そして2010年、カーネギーメロン大学の博士課程に在籍する学生と共同で、テキスト・メッセージと音声通話をおのおの暗号化して保護する「TextSecure」と「RedPhone」という2種類のソフトを開発した。

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