所沢に誕生「エミテラス」に"普通"の声が続出の訳 店は魅力的だが、施設自体の価値は不透明かも?

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例えば大阪に誕生した「うめきた公園」も、何もない空間がひろがっている。広大な芝生がメインの空間だ。

けれども、そこでは芝生が敷き詰められていることで人々が寝っ転がったりできるし、あるいは椅子の無料の貸し出しがあったりして、人々がそこで気持ちよく滞留できる工夫がある。何より、うめきた公園は全体の風景のデザインにこだわっていて、人々が居心地のいい空間を作る工夫がなされている。

うめきた広場
芝生で寝そべる人々。外国の公園みたいだ(筆者撮影)

公園と商業施設では、その開発のスキームが大きく違うから比較するのは酷かもしれないが、我々消費者から見れば、どちらも同じ空間だ。その意味で、エミテラス所沢はこうした「滞留」スペースとしての価値を向上させたほうがいいのではないかと感じるのだ。

椅子やテーブルがあるスペース
エミテラス所沢にはゆったりした椅子やテーブルがあるスペースも。「あ、こういうの助かる」と思う人は少なくないはずなので、こうした部分を強調したほうがいい気がした(著者撮影)

4階にある「そらくもひろば」でも似たことを感じた。そこは屋上公園のようになっており、遊具などがあって子どもが遊べる広場になっている。しかし、どこか窮屈な感じも否めず、もっと工夫すれば、より子どもたちが伸び伸び遊べる自由な空間になるのに……という感覚を持ってしまった。

屋外スペース
空は見えて気持ちいい……が、少し狭いかも?(著者撮影)

「テラス」的な開かれた空間への意図は感じなくはないが、どこかその目的が中途半端になってしまっていると思うのだ。

さまざまな商業施設が増え、テナントもたくさんある現在、「エミテラス所沢だからこそ」の場所としての価値を作っていかなければ、施設の価値は向上していかないだろう。

不自然に空いてしまった空間
こうした空間も不自然に空いてしまった空間も気になるところ。もう少し工夫ができるのではないか?(著者撮影)

むろん、ビジネス的な観点で言えば、短期での収益回収性を見込んでテナントで敷き詰めたくなる気持ちは理解できる。

しかし、さまざまな商業施設が増えている現在、長期的な視点で見れば、人々が集う場所としての空間価値を訴求したほうが結果的にその場所の価値も向上していくのではないか。

コミュニティのハブとなるような商業施設を作っていってほしい

『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』書影
『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社新書)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

……と、やや辛口になってしまったが、そもそも現在の商業施設で「テナントパワー」以外の価値として「場所の価値」を訴求できている施設はどれほどあるだろうか?

基本的には各施設が、「いいテナント」を持ってくる勝負のようになっていて、施設としての価値を本当に押し出している施設は少ない。

しかし、商業施設が飽和しつつある現在、より、人々が集い、コミュニティのハブになるような場所を作っていくほうが、ビジネス的にも筋がいいのではないか。その意味で、今回指摘したことはエミテラスだけでなく、すべての施設に言えることである。

まだエミテラスはオープンしたばかりだから、いろいろな部分を調整中である。所沢の新しい「顔」の一つとして、その価値を伸ばしていけるのか、見守りたい。

谷頭 和希 チェーンストア研究家・ライター

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

チェーンストア研究家・ライター。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

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