高齢化団地の管理組合"ポンコツ理事長"奮闘記 個性的な理事会メンバーと挑む戦いの幕開け

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転機が訪れたのは築35年を過ぎたあたりから。

私たちの団地も高齢化と老朽化の波にはあらがえませんでした。そしてついに、2016年から管理業務の一部を外部の管理会社に委託することになったのです。今まで自分たちで担っていたものを人に任せる。口で言うのは簡単ですが、誰に任せるか、どれだけ任せるか、その判断の重さに当時の理事長が倒れてしまったほど。

当時、私たち住民は「自主管理」か「管理委託」か、という違いは知っていても、「管理委託」に「完全委託」と「一部委託」の区別があることすら知りませんでした。

「完全委託」とは団地の管理業務のすべてを託すこと。「一部委託」とは団地の管理業務のうち、「会計と議事録作成のみ」とか「清掃と点検業務のみ」とか、一部だけを切り取って託すことです。

3つの管理方式 イラスト
肉球の数が多いほど、費用負担・労力負担は高くなり、住民の参加意識も高まることを表した図(私たちの団地の場合)。自主管理を続けるには参加意識を高く保つ必要が。一部委託したことで参加意識が下がり、さまざまな問題が起きるようになった(イラスト/てぶくろ星人)

しかし当時の資料を見ると、表組で示された委託項目は「事務管理業務」「管理員業務」「清掃管理業務」「設備管理業務」に限定され、そのすべてに〇印がついてます。管理会社も受託件数を増やすのに必死だった時期でした。ぱっと見ただけでこの契約内容が「一部委託」だと分かる住民はけっして多くなかったでしょう。

また注釈のところに、団地の理事に残る主な業務は、「理事会・総会の開催」「月次・半期・年次決算監査」「防火管理者の選任」「一部の緊急業務対応」「外部委託業者との折衝や評価」等と記されていますが、実際はそれで済むはずもありませんでした。

管理会社への一部委託で緩む緊張感と、波乱の始まり

「完全委託」にすれば楽になれるのに「一部委託」に留まった理由は2つ。1つはお金の問題。もう1つは信頼の問題でした。管理委託がどのように機能するか、見極めがつかなかったのです。それに、一気に大きく変えてしまっては気持ち的についてこられない人もいます。

当面は組合員から徴収する共益費を据え置き、これまでの余剰金を取り崩しながら様子を見ることになりました。いつでも自主管理に戻すことができるように、そしていつでも管理会社をリプレイスできるように……その緊張感は理事会が代替わりすると、あっという間に緩んでしまいました。

「ああ、管理委託でやっと楽になれる……」。

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