アメリカの投資ファンド、ブラックストーン・グループは、年内にも大衆薬大手「アリナミン製薬」の株式を、同じく投資ファンドのMBKパートナーズに売却する。2021年3月に武田薬品工業がブラックストーンに売却した際の総額は約2400億円。ブラックストーンからMBKへの売却総額は約3500億円と、評価額は約3年半で約1.4倍に膨らんだ。成熟市場とされる大衆薬市場において、武田の冠を外したアリナミン製薬はどのようにバリューアップを図ったのか。
「非中核事業」の宿命
「どうして売却を決めたのか」「われわれの雇用はどうなるのか」
2020年8月。武田薬品工業が武田コンシューマーヘルスケア(TCHC、現アリナミン製薬)の売却を発表したのとほぼ同時に、TCHC社内では従業員向けの説明会が開かれていた。コロナ禍を考慮してリモートでの開催だったが、画面から伝わってきたのは、得体のしれない外資ファンドに買われることへの不安だった。
TCHCは2017年、武田の大衆薬事業が分社化されて誕生した。医療用医薬品の研究開発に軸足を置く武田にとり、大衆薬は非中核事業だ。2018年からはシャイアー買収で膨らんだ負債も重荷となり、TCHCの売却は時間の問題だった。
期待と不安が入り混じる中の2021年3月、TCHCのオーナーはブラックストーンに変わった。資本関係がなくなった武田の名は、もはや社名に冠せられない。従業員同士の議論を経て、新社名は看板商品を掲げた「アリナミン製薬」に決定。社章も武田のウロコ印を彷彿とさせつつ、Aの文字をあしらったデザインに一新した。
第二の創業を担う人材としてブラックストーンが送り込んだのは、エーザイで副社長を務めた本多英司氏。当時はブラックストーンのシニアアドバイザーかつ、同社の投資先であるあゆみ製薬で会長を務めていた。
「本多さんはとにかく国内営業に強い。大手ドラッグストアのオーナーとも人脈がある」。ブラックストーンの坂本篤彦代表はこう評する。本多氏に課せられたミッションは、どぶ板営業によるドラッグストアとの関係修復だった。
この記事は有料会員限定です
残り 1724文字
