当時の国内大衆薬市場は、大正製薬がシェアで首位を走り、アリナミン製薬は6位。看板商品であるアリナミンも、ビタミン剤としてのシェアは21%、栄養ドリンクに至っては11%と低迷していた。「ブランド力があるのに、ここまでシェアが落ち込んでいるのはおかしい」(坂本代表)。
要因はTCHC時代に置かれた環境にあった。分社化によって非中核事業に位置づけられると、成長投資に予算を回せなくなった。営業現場も効率化され、ドラッグストアチェーンの本部との商談や資料作成に重きを置くようになった。実店舗からは次第に足が遠のき、陳列棚では競合他社やプライベートブランドの攻勢に押されてアリナミンが隅に追いやられることが増えていた。
本多氏が掲げたのは、靴底を減らす営業への回帰だ。営業担当者の外勤時間を1.2倍、店舗の訪問件数を3倍以上に増やした結果、直近のアリナミン錠剤のシェアは1.5倍の約32%、栄養ドリンクも約13%に回復した。
復活した海外事業
本多体制で推進したもう1つの施策が海外展開だ。もともとアジア各国でアリナミンなどを販売していたが、武田がTCHCと並行してアジア太平洋地域の一般医薬品事業の売却に着手したことで、取引が完結するまで積極的な投資がしにくくなり、開店休業状態だった。
本多氏はエーザイ時代に海外事業の責任者を務めており、人口減少が進む国内だけでの成長には限界を感じていた。2020年末、武田のアジア医薬品事業が韓国の製薬大手に売却されて足かせが解けると、一気にアクセルを踏む。
2021年、手始めに台湾現地法人を設立すると、翌年には販売を委託していた台湾武田薬品工業から大衆薬事業を買収。2021年度に34億円だった台湾事業の売り上げは、2023年度に142億円まで伸びた。現在はタイや韓国、香港での現地販売や、中国での越境ECにも進出している。
古希に差しかかる本多氏の任期は、当初から2年程度が予定されていた。そこで2022年6月、ボストン・コンサルティンググループで消費財分野のコンサルタントなどを務めた森澤篤氏がバトンを受け継ぐ。
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