米大統領選、トランプとハリス「鉄道政策」の争点 バイデンが進める鉄道復権の動きは継続するか

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今回、2024年の大統領選においても、この対立構図は変わっていない。ハリス候補は、アムトラックのヘビーユーザーであったバイデン氏とは違って、鉄道好きをアピールすることはしていない。だが、左派の環境政策も理解しており、オバマ、バイデン路線でできた鉄道復権の流れを継承する姿勢だ。

一方で、トランプ候補の方は、現時点では詳細な政策パッケージを公表していない。そんな中で、候補自身が賛同しているとする保守系シンクタンクの政策提言「プロジェクト2025」が政策大綱の位置づけとなっている。この提言では、連邦運輸省傘下の交通局(FTA)を縮小するとともに地方交通機関への補助金に大ナタを振るうとしており、過激なまでに反鉄道の姿勢が書かれている。

『鉄道ジャーナル』2024年12月号(10月21日発売)。特集は「地域鉄道の希望」。書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

トランプ・トレインとは何か?

ちなみに、トランプ陣営には「トランプ・トレイン」という旗があり支持者の多くが掲げている。この旗には、蒸気機関車のイラストが描かれており、一見すると鉄道肯定論に見えるが、実はそうではない。この「トランプ・トレイン」というのは、2020年に自動車による編隊(トレイン)を組んで高速道路を占拠し、民主党の選挙運動車両の通行を妨害した「壮挙」を自画自賛するもの(実際は違法行為として起訴され公判中)である。故意に発生させた渋滞で動かなくなった政敵の車列を、嘲笑を込めて「トレイン」と呼び、そのことを機関車のイラストで象徴するというのであるから、むしろ、トランプ支持者がそこまで鉄道を嫌っているのかという証拠とも言える。

鉄道政策1つとっても激しい対立構図の中にあるのが今回の大統領選であり、そこには候補が特別列車を仕立てて各州を遊説するような「懐かしい光景」は見られない。演説会場から演説会場へと候補たちはジェット機やバスで忙しく移動し、それとは別にSNSを主としたネットによるメッセージ発信が中心の選挙戦に様変わりしているからだ。けれども、動き始めたアメリカの鉄道復権が継続するかどうかは、重要な選挙戦の争点になっていることは間違いない。

鉄道ジャーナル編集部

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車両を中心とする伝統的な鉄道趣味の分野を基本にしながら、鉄道のシステム、輸送の実態、その将来像まで、幅広く目を向ける総合的な鉄道情報誌。創刊は1967年。

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冷泉 彰彦 作家

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れいぜい あきひこ

1959年生まれ。東京大学文学部卒。米国在住。『アメリカは本当に「貧困大国」なのか』など著書多数。近著に『「上から目線」の時代』(講談社現代新書)。

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