栄養ドリンク元祖「赤まむしドリンク」の現在 志村けんと研ナオコによる伝説の夫婦コント

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購入した赤まむしドリンクのラベルを見ると、製造者に日興薬品工業と記されていた。しかも、本社があるのは筆者が暮らす愛知県。親近感が湧き、ネットで調べてみたところ、とんでもない事実を知った。

赤まむしドリンクが現代版として進化し、エナジードリンクを謳うラインナップ品が誕生していたのだ。その名も「レッドマムシ」。ロゴもパッケージもすこぶるカッコ良く、他社のエナジードリンクと並べても遜色はない。これなら若者はもちろん、赤まむしドリンクを知る世代の心もつかむはず。長い時を経て、赤まむしドリンクの大逆襲がはじまったのだ! これは是非、開発者に話を聞いてみたいと思い、電話で取材を申し込んだ。

レッドマムシ
「レッドマムシ」1本270円。※日興薬品工業の楽天市場の価格(筆者撮影)

「レッドマムシが発売されたのは2017年で、今では店頭販売している所は少なく、ほぼネット通販のみの扱いになっています。それでもよろしければ……」とのこと。興奮している筆者とは裏腹にテンションはかなり低い。どんな事情があるのかは知る由もないが、とりあえず話を聞きに行くことにした。

「高度経済成長期と呼ばれた1955年から1973年にかけて、全国で十数社あったと聞いていますが、さまざまなメーカーから『赤まむし』の名を冠した栄養ドリンクが発売されていました。そのブームに乗ろうと弊社は1970年に創業しました」と話すのは、日興薬品工業営業部部長の梅本啓さんだ。

2000年の薬事法改正で人気は下火に

赤まむしのメーカーとしては後発組だったものの、当時では最新鋭の設備を導入したことで高品質かつ低コストで生産することができたため業界でも一目置かれる存在となった。

ちなみに静岡県浜松市の名物、春華堂の「うなぎパイ」は、1961年の発売当初は青色のパッケージだった。キャッチコピーの「夜のお菓子」に込められた思いも本来は「家族だんらんの時間に食べてほしい」というものだったが、精力剤的な意味に誤解されて客の反応も今ひとつだった。春華堂はそれを逆手に取って、当時売れていた赤まむしのラベルに使われていた赤・黄・黒を基調としたパッケージに変更したところ、爆発的人気となったという。

一方、赤まむしは、1980年代に年間総生産数1500万本を超えて、スーパーやホテル、旅館など販路を拡大した。

日興薬品工業
日興薬品工業営業部部長の梅本啓さん。レッドマムシの開発にも携わっている(筆者撮影)

「当初は何となく身体に良さそうな飲み物としてお客様に捉えられていましたが、志村けんさんと研ナオコさんのコントに使われたのをきっかけに夜のイメージになってしまいましたね。2020年に志村さんが亡くなって、研ナオコさんとのコントが追悼番組で放映されました。その翌日に赤まむしドリンクの問い合わせをいただきました」(梅本さん)

バブル期になり、1989年の新語・流行語大賞に選ばれた「24時間戦えますか」のキャッチコピーで一世を風靡したリゲインをはじめ、ユンケルやグロンサン、タフマンなど栄養ドリンクは熾烈な競争を繰り広げていた。赤まむしドリンクは大手メーカーには敵わなかったものの何とか生き残ることができた。ところが……。

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