ところが、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は停戦を拒否。ポケベルやトランシーバーに仕掛けられた爆発物が一斉に爆発して約40人が死亡、3000人以上が負傷したほか、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラへの攻勢を強めた。
さらに、イランが支援する中東各地の対イスラエル抵抗勢力の中でも最もカリスマ性を誇るヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ師を、本部地下施設への地中貫通型爆弾(バンカーバスター)による空爆で殺害した。
「大きな賭け」に出たイラン
イランの外交・軍事戦略の根底にあるのは「戦略的な忍耐」である。西側諸国による経済制裁下にあるイランと、アメリカと強固な同盟関係にあるイスラエルを近代的な軍事装備の面で比較すれば、その差は歴然だ。
イランは、イスラエルと真正面から衝突するのは得策ではないとの判断の下、匿名性の高い攻撃や民兵勢力を使った「非対称戦争」を仕掛け、4月の直接攻撃以降もこうした枠組みの中での戦いに収めようと努めてきた。
しかし、耐え忍んでいる間にイランは対イスラエル戦略の要であるヒズボラの指導者を失い、最大20万発といわれたヒズボラのロケット弾や、ミサイルの約半数がイスラエルにより無力化されたと伝えられる。
ヒズボラやハマスなど対イスラエル抵抗戦線の首領であるイランは、メンツを潰されたことから自制してきた報復を実施せざるを得なくなるとともに、ヒズボラの弱体化を招いているイスラエルの攻勢に歯止めを掛けるための抑止力の確保を狙い、大きな賭けに出た格好だ。
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