いいもの安く「VW日本法人」本国との戦いの果実 新型T-CROSS試乗会で聞いたジャパンの仕事

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さらにもうひとつ、新しくなったT-CROSSには“いいところ”がある。それは価格だ。

もっともベーシックな「TSI Active」で329万9000円。フォルクスワーゲン好きが興味を持つであろう日本の競合車と比較しても、こちらのほうが安いぐらいだ。

TSI Activeは見た目の華やかさは抑え気味となるが、機能性は大きく変わらない(写真:フォルクスワーゲン グループ ジャパン)
TSI Activeは見た目の華やかさは抑え気味となるが、機能性は大きく変わらない(写真:フォルクスワーゲン グループ ジャパン)

「フォルクスワーゲンは、ずっと“技術の民主化”というポリシーを追求してきました」。前出の山谷氏は言う。

「競合ブランドと同等かそれ以上の性能をもつ車両を、はるかに下回る価格で提供する。いいものは、できるだけ多くの人に接してもらいたいから価格を抑える。それが“民主化”なのです。高性能なゴルフGTIやゴルフRを見てもわかるでしょう」

いい製品は日本法人の「戦い」があってこそ

今回のT-CROSSは、まさにそのポリシーに忠実に開発されたと評価できるモデルだった。フォルクスワーゲンファンに、好きになったきっかけを尋ねると、多くのファンは“性能、品質、デザイン、価格のバランスがとれている”ことを挙げる。

「正直に言って、円がいまより強かった時代は、日本でもなんの問題もなく“民主化”政策を推し進めることができました。でも、欧州と日本とで経済成長の差が開きはじめ、円が弱くなると、本来のフォルクスワーゲン車のよさを追求していくのが難しくなってきます。そんな中で、私たちは、手の届きやすいプロダクトを日本のユーザーに届けることが使命だと思っています」

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実際、ゴルフやBEVの「ID.4」は欧州より日本のほうが、価格が低く設定されているそうだ。その努力を山谷氏は「戦い」と、やや冗談めかして表現する。

メーカー相手にその「戦い」をしてくれたから、今回の新型T-CROSSがより輝いているのだと思う。輸入車の日本法人は、右から左に、プロダクトを売るだけが仕事ではないのだと、改めて感じさせるのだ。

【写真】ディテールまで見てほしい新型「T-CROSS」(59枚)
小川 フミオ モータージャーナリスト

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おがわ ふみお / Fumio Ogawa

慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

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