登校率8割の公立小中一貫「学びの多様化学校」、イエナプラン土台に独自教育 玖珠町の挑戦「誰もが安心して通える学校を」

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さらに上田氏は、同校は「不登校の子のための学校」ではないと強調する。

「この学校の設立は、『教育に関わる大人の責任として、今までの学校がすべての子どもにとって安心して通える学校だったのかを考え直してみよう』という議論からスタートしました。そして明確になったのは、不登校のお子さんのための学校ではなく、すべてのお子さんにとっての未来の学校、どんな子も安心して自分らしく通える学校を目指そうということ。そのためにも『指導』ではなく『支援』という言葉を大切にしていますが、だいぶ浸透してきたと感じますし、実際に教員の皆さんが伴走的な支援を意識的に実践してくださっていると思います」(上田氏)

手探りで取り組む教員たちの支えになっている存在もある。併設する「わかくさの広場(教育支援センター)」だ。

「玖珠町では以前から各学校にスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを配置するほか、わかくさで不登校支援を行ってきました。わかくさで指導にあたるのは校長を退職した方などキャリアが豊富な方ばかり。多様化学校はこのわかくさと併設して連携しているので、多様化学校の教職員たちはわかくさの指導者の子どもとの接し方や考え方に触れられるのです。これは貴重な機会となっています」(小原氏)

「平均登校率8割」、全国から入学希望の相談も

新しい学校で子どもたちは何を感じ、どう変化しているのだろうか。

「4月当初、子どもたちはそれぞれ緊張感や不安、夢と希望を抱いていたと思いますが、表情が変わりましたね。子どもの平均登校率は約8割で、中には去年の同時期に100日以上休んでいたのに今年は欠席が0日という子も何人かいます。ある保護者の方は、お子さんが『学校に行くのが楽しい。多様化学校の先生は笑顔で楽しそうに働いている。それを見て私も学校に行けるんよ』と言っていたと教えてくれました」(小原氏)

開校したばかりだが、すでに全国から入学希望の相談が30件ほどあるという。今後について、小原氏はこう語る。

「1学期は授業の進め方1つ取っても、走りながら考えているところがあり、そこから見えた課題や成果を踏まえ、教職員は夏休みに集中して研修に取り組みました。今年度の充実と次年度以降を見据え、体制や学びをブラッシュアップしていきたいと思います」(小原氏)

今、悩んでいる子どもたちを救いたい。そんな強い思いから、走りながら学校づくりを進めてきた玖珠町立学びの多様化学校。その歴史はまだ始まったばかりだ。

(文:吉田渓、注記のない写真:玖珠町教育委会提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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