登校率8割の公立小中一貫「学びの多様化学校」、イエナプラン土台に独自教育 玖珠町の挑戦「誰もが安心して通える学校を」

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「教育委員会の職員が『やろうじゃないか』と一つになってくれたのも大きかったです。ほかの学校と遜色ないようにするため、施設をどうするか、スクールバスをどうするかなど、それぞれの役割・立場で取り組んでくれました」と梶原氏は振り返る。

「イエナプラン教育」を土台に独自の学校をつくる

2024年4月1日、校長・教頭を含む10人の教員が同校に着任した。校長の小原猛氏がまず取り組んだのは、教員全員での対話だった。そこで話し合って決めたのが、「みんなが主役の学校」というコンセプトだ。「この“みんな”には児童生徒はもちろんのこと、大人も含まれています」と小原氏は話す。

小原猛(おはら・たけし)
玖珠町立学びの多様化学校 校長
5歳で両親が離婚し、別府市内の母子生活支援施設で幼少期を過ごす。大阪教育大学小学校教育(夜間)5年専攻を卒業、臨時講師の期間を経て、1997年から小学校教諭として杵築、別府両市で勤務。2006年から18年間、別府市教委などで教育行政などに携わる。2024年4月から現職

同校は今、このコンセプトを掲げ、ドイツで生まれオランダで広がったイエナプランを土台に教育内容を設計しているが、主に4つの特徴がある。

1つ目は、「ゆるやかな通学時間、しなやかな学習スタイル」だ。現在、児童生徒は町内全域から集まってくるほか、町外から通う子が3人いるが、登校時間は9時半に設定しているので無理なく登校できる。また、自習室や図書室など好きな場所で学習でき、オンラインで授業を受けてもいい。

2つ目は、「個別の学びで自分のペースで学べる」こと。教科学習は、スタディサプリなども活用して個人の進度とペースに合わせて進め、教員は個々の学習進度や課題に応じたサポートを行っている。つまずいたところまで自由にさかのぼれるし、中には地元の中学校のカリキュラムよりも先に進んでいる子や、歴史の勉強を深めるために博物館へ1人でフィールドワークに出かける子もいるという。

3つ目は、「豊かな探究活動で好きを深める」点だ。個人の興味関心を中心に取り組む「マイ探究活動」と、在籍児童生徒全員でテーマを決めて取り組む「ワールド探究活動」を実施。1学期のワールド探究では、「学校づくりプロジェクト」として校内施設のネーミングを考えてプレートを作ったほか、「夏まつりプロジェクト」として屋台や流しそうめん、学校宿泊などを行った。2学期は「校名プロジェクト」「文化祭プロジェクト」に取り組んでいる。

夏まつりプロジェクトの様子(写真左上・右上・左下)。学校づくりプロジェクト(写真右下)

そして4つ目の特徴は、「みんなでつくる学校生活」にある。現在、児童生徒は22人、校長・教頭を含む11人の教員で構成されているが、1~9年生を3学年ごとに区切って1学級とする異年齢学級を採用し、チーム担任制で複数人の教員が役割分担しながら子どもたちと向き合っている。また、行事や部活、校則など、必要なことは子どもたちが話し合って決める方針を取る。

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