京都・宇治に出現した「任天堂ミュージアム」の全貌 テーマパークと異なる"展示施設"を作った裏側
実はこのミュージアム、宮本氏が毎年新入社員向けに話している講義の内容が展示のベースとなっている。
ゲーム機で言えば、十字ボタンが生まれたゲーム&ウオッチ、2画面とタッチペンを使うニンテンドーDS、リモコン型コントローラーを振って操作するWiiなど、任天堂は世の中に存在しなかったようなアイデアで新たな遊び方を提案してきた。
「新しいものを作るチャレンジをする一方で、ベースに流れている、家族や遊び、わかりやすさといったコンセプトを守って作っていこうというのが社員に根付いていけば、ずっと新しい任天堂が膨らんでいく」。宮本氏はそう強調する。
ただ、近年はゲームの開発規模が拡大傾向にあり、開発に携わる社員の数も増えている。任天堂の連結従業員数は、ニンテンドースイッチ発売後の7年間だけでも、5166人から7724人へとおよそ1.5倍となった。会社がますます大所帯となり世代交代も進む中で、”任天堂らしい”商品を生み出し続けるためには、過去の開発者たちが商品に込めてきた思いをいかに社員に伝えていくかが課題だった。
宮本氏は、任天堂の商品開発におけるコンセプトを、ミュージアムの展示を通じて一般消費者にも伝えていきたいという。「ゲームの競合や先端技術とは関係ないところにある会社だと思ってもらえるのが大事。(新しい技術を)いちばん適正な売り時が来たときに商品化している歴史が見てもらえると思う」。
スイッチ後継機でも問われる“らしさ”
この任天堂らしさを維持できるかどうか、1つの試金石となるのが、今期中にアナウンスするとしているスイッチの後継機だろう。
2017年3月に発売したスイッチは、テレビにつなぐ据え置き型としても、本体を持ち出して携帯型ゲーム機としても遊べる。多様な遊び方を可能にしたことで大ヒットとなり、今年6月末までの販売台数は1億4000万以上と、歴代最多のニンテンドーDS(1億5402万台)を上回る可能性がある。
スイッチのヒットは、近年の任天堂の成長を支えてきた。2024年3月期の全社業績は売上高1兆6718億円(前期比4.4%増)、営業利益5289億円(同4.9%増)と、2017年3月期から売上高は3.4倍、
中興の祖とされる山内溥氏は「この業界には天国と地獄しかない」とよく語っていたという。新しい遊びを提案し続けることがアイデンティティであると、ミュージアムで改めて示した任天堂。発表が近づく後継機でもその精神が込められているのか、期待が高まる。
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