5年で1.7倍!夜間中学が急増、不登校だったのに「学び直し」で通える工夫とは 「形式的に中学卒業」も授業は受けていなかった

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近年、中学校夜間学級(いわゆる夜間中学)の新規設置が相次いでいる。夜間中学は何らかの理由で十分な義務教育を受けられなかった人が年齢や国籍を問わず通うことができ、すべての過程を修了すれば中学校卒業資格を得ることができる学校だ。2019年に全国31校あったものが、この5年間で53校(2024年4月現在)にまで1.7倍に増加した。その背景には、不登校経験者など学び直しの日本人生徒の急増がある。これまで「外国人が日本語を学ぶ場」という側面が強かった夜間中学が今、大きく変わり始めている。

予想以上に高まる学び直しのニーズ

文部科学省が2014年度から数年ごとに行う「夜間中学等に関する実態調査」によると、夜間中学の生徒の大半は外国籍で、2019年度まで日本国籍の生徒は2割を下回っていた。しかし、2022年度は調査開始以降初めて日本国籍の生徒が3割を超え、現在はさらに増えているとみられる。

2022年4月に開校した相模原市立大野南中学校分校夜間学級の副校長の菅原勝氏は、予想以上に学び直しのニーズが高まっていることを痛感したという。

「開校前の調査では外国籍の方からの要望が多かったのですが、実際に開校してみると意外にも学び直しの日本人の入学が多かった。その多くが不登校だった人たちです」(菅原氏)

菅原勝(すかわら・まさる)
相模原市立大野南中学校分校夜間学級 副校長

3年目を迎えた同校には現在29人(日本国籍20人、外国籍9人)の生徒が在籍し、すでに卒業して高校に進学した人もいる。日本人生徒は開校時から3割を超え、2年目以降は過半数を占めており、首都圏の夜間中学では珍しいケースだ。

しかし、不登校だった人が急に学校に通い続けるのは簡単なことではない。同校ではどのような学びが行われているのだろうか。

校則・号令はなし、“生徒がわかる授業”を追求

9月中旬。同校を訪れると、始業(午後5時15分)の1時間前から生徒たちが自主的に登校していた。空き部屋で自習する生徒もいれば、ラウンジで菓子を食べたり、ゲームをしてくつろぐ生徒もいる。校内への菓子やゲーム機の持ち込みは、通常学級だけでなく、ほかの夜間中学でも見られない光景だ。

空き教室で自習する生徒たちを教員がサポート

「うちには校則はありません。始業後は食事をとる時間はないので、菓子や弁当を食べても構いません。空き時間にゲームをしても問題ありませんし、髪型も服装も自由です。成人の生徒もいますし、全員が学齢を超えているので自主性に任せています」(菅原氏)

授業でも他校と異なる点が見られた。号令や起立はなく、生徒も教員も「よろしくお願いします」「ありがとうございました」とあいさつするだけで、フランクな雰囲気だ。そして、必ず2人以上の教員がつくチームティーチング(TT)が行われ、言語のサポートや手助けが必要な生徒をきめ細かく支援する体制が取られていた。

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