5年で1.7倍!夜間中学が急増、不登校だったのに「学び直し」で通える工夫とは 「形式的に中学卒業」も授業は受けていなかった

「生徒に再び挫折を感じさせないために、必要のないことはやめ、徹底して“生徒がわかる授業”を目指しています。ほかの夜間中学では個別学習のような形や日本人と外国人の授業を分けることも多いですが、うちではサポートしながら学級として一緒に学んでいます。生徒同士が教え合う姿もよく見られますし、集団授業の中で学びを深め合っています」(菅原氏)

このようなスタイルに行きついたのは、「授業で勝負したい」という強い思いがあるからだ。
「外国人のための日本語学校にはしない。そして、日本人、外国人を問わず、中学校の教育が必要な人のための学校にしようというのが、開校時からのコンセプトです。夜間は時数が限られるので“何を教えて、何を教えないか”の選別が難しいのですが、月曜に1週間すべての授業について全教員で『その内容で生徒が理解できるか』を検討します。TTには異なる教科の教員がつき、授業後にはフィードバックし合っています。生徒のためにできることは、すべてやるつもりです」(菅原氏)

年齢・国籍・考え方の違いに刺激 「私は私のままでいいんだ」
既存の学校と異なるスタイルは生徒に好評だ。1年生の桐生藍さん(36歳)は「先生は親戚のおじさんみたいな感じかな。冗談も言い合えるし、変な質問をしても怒られないので、わからないことはその場ですぐに聞けます。いろいろな生徒がいるので、私は私のままでいいんだなって思えるし、とても勉強しやすい」と話す。
1年生の鈴木咲さん(10代、仮名)も「先生と生徒の関係は平等だし、前に通っていた学校とは全然違う。クラスメイトは年齢も国籍も異なるし、考え方も違うけど、そこが面白い。すごく刺激を受けています」と楽しそうだ。
2人はすでに中学校を“形式卒業”しているが、当時は不登校で授業をほとんど受けておらず、もう一度学び直したいという気持ちを持ち続けていた。

桐生さんは中学卒業後すぐに結婚し、4人の子供を育ててきた。現在は給食調理の仕事をしているが、パートタイムの仕事を探すたびに「高卒以上」という条件に阻まれ、悔しい思いをしてきた。
「テレビで夜間中学のことを知って、もう一度勉強して高校にも行きたいと思っていたのですが、通える距離に学校がなかったんです。でも、1時間半で通える相模原に夜間中学ができ、子どもも大きくなったので、今がタイミングだと思って入学しました。仕事が終わってからバスと電車を乗り継いで通うのは大変だけど、自分のために何もしたことがない人生だったので、勉強できることがすごくうれしい」(桐生さん)