「教材費抑えられない?」適応障害発症の技術科教員が明かしたプレッシャーの複合要因 管理職の理解なく「備品じゃダメ?」に徒労感

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実際、文部科学省が2022年度に実施した調査では、技術を担当する教員の23%が正規免許を持っていないことが明らかになっている。これはそもそも、技術の教員免許を取得できる大学が少ないことも原因のようだ。

中学校技術分野担当教員の免許状所有状況(令和4年度)
※臨時免許状…助教諭、養護助教諭の免許状。普通免許状を有する者を採用することができない場合に限り、教育職員検定を経て授与
※免許外教科担任制度…中学校、高等学校等において、相当の免許状を所有する者を教科担任として採用することができない場合に、校内の他の教科の教員免許状を所有する教諭等が、1年に限り、免許外の教科の担任をすることができる。校長および教諭等が、都道府県教育委員会に申請し、許可を得ることが必要
(出典:文部科学省「学校技術・家庭科(技術分野)の指導体制に関する実態調査」令和6年2月 文部科学省初等中等教育局学校デジタル化PT)

「前任校は週10コマだったので、担任をしても週14コマと十分余裕がありました。生徒指導などの校務分掌にも積極的に取り組めたんです。しかし、今の学校は技術の授業だけで週18コマ。担任をすると授業準備の時間がほぼなくなってしまうため当初は断ったのですが、管理職に『他の先生方にも週18コマで担任をお願いしているので』と言われてしまいました」

もともと富岡さんは、生徒指導やクラス担任の先生に憧れて教員を志した。前任校でも担任として複数回卒業生を送り出し、その喜びは非常に強いものだったという。そこで現在の学校でも最終的にはクラス担任を引き受けたのだが、負担は想像以上だった。

「前任校では、働き方改革を意識して非効率なことはなるべくせず、残業も控える雰囲気がありました。でも、着任校は違いました。例えば、終業時間は17時にもかかわらず、学年会議は17時を回ってから始まり、当然のように2時間以上続きます。また、保護者や地域の人からのクレームを恐れて、職員室で出たゴミは一度封筒に入れてから捨てるというルールなどもあるのです」

一方で、担任を持たず、授業も週10コマ程度しかない教員も複数人いたという。休職経験があるなど、のちにそれぞれの理由は判明するが、当時着任したばかりの富岡さんは知る由もない。風通しの悪さや不透明さに起因する不信感もあり、富岡さんの心身は次第に蝕まれていった。

技術科の学びの意義は管理職でさえ理解不足

さらに追い打ちをかけたのが、「技術科に対する理解の低さ」だ。中学校学習指導要領では、技術科において「材料と加工」「エネルギー変換」「生物育成」「情報」の4つに関する基礎的・基本的な知識および技術を習得することを目的としている。

「技術科は受験科目ではないことから、『副教科』と呼ばれるなど軽視される傾向にあります。しかし、2020年からの学習指導要領は技術科の目標を『問題解決能力の育成』としています。よりよい生活の実現に向けて必要な力を身につけるために、子どもたちにとっても重要な科目だと思うのです」

例えば「材料と加工」は、散らばっているものをどうするかという問題を、棚の作成などを通じて考える。また『生物育成』では、例えばトマトの栽培などを通して必要な栄養素や環境を考えるという。

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