給付削減に向けた年金改革、楽観的な経済前提を見直し、真の財政見通しを示せ
とはいえ、国民の怒りとは裏腹に、支給開始年齢の68歳への引き上げはいずれ避けられないと、多くの専門家は口をそろえる。
高山憲之・年金シニアプラン総合研究機構研究主幹は語る。「支給開始年齢の68歳への引き上げは必要だが、実施するにはそうとう時間がかかるから、早く決めておくべきだ。平均寿命が延びている現状では、支給開始年齢が68歳に上がっても、受給期間が短くなるわけではない」。
中嶋邦夫・ニッセイ基礎研究所主任研究員も、「少子化や長寿化が進む中で年金財政をバランスさせるには、特例水準解消やマクロ経済スライドの適用だけでなく、支給開始年齢の引き上げも必要だ」と言う。
積立金が枯渇する
厚労省は、04年の改革で宣言した「100年安心」を、その後、リーマンショックなどで経済状況が変化しても変えていない。しかし、支給開始年齢を68歳へと引き上げなければ年金財政を維持できないのなら、もはや「100年安心」と言い続けることは矛盾している。
鈴木亘・学習院大学教授の試算によれば、厚生年金の積立金は33年度、国民年金の積立金は37年度に枯渇する見通しだという。
一方、厚労省が09年に示した年金財政見通しでは、いずれも40年代ごろから徐々に減少していくものの、ほぼ100年後の2105年にも積立金は残ることになっている。