顧客価値を生むことができる人材、次世代のビジネスモデルを考えられる人材を生み出していきたい--近藤史朗・リコー社長

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 リコーは、今世界金融危機後のリセッションの中で非常に苦しんでいます。人員の増加と、円高による影響で大変な時期を迎えているのです。もちろん、ある程度の予測はしていて、私が社長になった2007年に「筋肉質にしなければ駄目だ。リストラもやむをえない」と伝えました。
 
 しかし、業績が好調を維持しているときには大きな改革には踏み切れないものです。内部の管理をしっかり行いながら成長してきたという自負があるため、逆に大企業病に陥るリスクを抱えていたのです。

そして今、社長就任の5年目で人員の最適化に向けた施策も行うことになりました。次の成長へ向けて事業ポートフォリオを管理するうえで、人の再配置は避けて通れないと考えています。

個人とオフィスの分け隔てがなくなりサービスも変わる

ここで、グローバル競争の拡大と価値基準の変化についてお話しします。IMFによる実質GDP成長率の予測を見ると、08年に起こった世界金融危機以前への回復を実現しているように見えますが、実際にはヨーロッパをはじめ非常に不安定な状況が続いていて、決してそこまでの回復を見せているとは実感できません。加えて想定を超えた円高も継続しています。
 
 このような中で、リコーのビジネスでも「顧客価値」が大きく変わってきています。クラウドコンピューティングという言葉をよくお聞きになるでしょう。つまり、何でも自前で所有することから、借りる、そして最大効率のものを利用する方向にシフトしてきています。ハードウエアを所有することから、モノを持たずに利用度を高めていくという方向に向かっているのです。
 
 特に、先進国においてコスト削減のために、さまざまな業務をアウトソーシングすることが顕著になってきています。

このように世界は一層の効率化、低コスト化に向けて動いています。最近は社内でも「会社に出社しない働き方を考えてほしい」と指示を出しています。
 
 たとえば、銀座にある営業のオフィスでは、今年の夏は節電ということもあり、常駐するオフィスには出社せず、直行直帰などで効率を上げる働き方を実践しています。会社への通勤時間が無駄となるケースも多く、その分お客様のところに直接伺えるよう仕組みを検討し、ようやく実現してきつつあります。

その結果、ある部門の顧客接点の活動量は1.5倍になったと報告を受けています。働き方が急速に変わってきていると実感しています。いつでもどこでも働ける環境が拡大し、それに伴い社会に必要とされるサービスも変わってくるはずです。リコーの今後の重要な取り組みは、その変化にいち早く対応することです。

「成長」と「体質改造」の同時実現

これからどのように成長していくのか。リコーは「グローバルブランドを目指して新たなイノベーションで未来を拓く」、「『成長』と『体質改造』の同時実現」を第17次中期経営計画のスローガンとしています。

成長と体質改造の同時実現について、まず1つ目の戦略として「事業の創造と集中」ということをお話ししたいと思います。それはつまり「新陳代謝」の促進です。コアビジネスの周辺でどのような変化を生み出し、そこに新しい顧客価値をつくるかがテーマです。
 
 リコーのコアビジネスはオフィス分野とプロダクション分野におけるプリンティングで、そこに対する顧客接点力とそれを生かした商品・サービスの提供に強みがあります。一方で弱さとしては、コンシューマー向けチャネルが少ない点が挙げられます。

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