【産業天気図・証券業(既存大手中心)】相場停滞で全社減額。下期も相場次第で再減額の恐れも

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証券業界の天気図は、06年度下期(06年10月~07年3月)を従来の「晴れ」から「曇り」に変更する。07年度上期(4~9月)は「晴れ」とするが、期待を込めた株式相場の回復を織り込んだもので、市況次第では「曇り」や「雨」になる懸念もある。
 今年4月までは出来高・売買代金の活況が続いた株式市場だが、「村上ファンド・ショック」を契機とした相場の急落をきっかけに、ネットを中心に取引を行う個人投資家の売買意欲が大きく減退。市況停滞で彼らの含み損状態も改善しないため、5月の連休明けから8月中旬まで、売買代金の低調が続いた。個人の株式売買手数料の料率は機関投資家など法人のそれよりも大きいため、個人取引の減退は株式依存度の大きい中堅・準大手以下の証券会社に大きなダメージを与えている。すでに単月決算が赤字となった証券会社も出た模様だ。8月半ば以降は相場が盛り返したものの、売買代金の盛り上がりは05年下期には遠く及ばない。足元の状況が続けば、06年下期の各社の『会社四季報』予想を、さらに減額しなければならないだろう。
 今後のポイントは(1)ネット取引の採算性、(2)銀行による系列証券の完全子会社化戦略の是非、の2点だ。(1)では、野村ホールディングス<8604.東証>傘下のジョインベスト証券に続き、岡三ホールディングス<8609.東証>も今秋から岡三オンライン証券を立ち上げる。手数料競争も激化の一途だが、肝心の個人取引が盛り上がっておらず、過当競争状態は明らか。このままでは、高成長を続けてきたネット専業大手も、おそらく初めての急ブレーキを経験することになりそうだ。
 一方、(2)では、三井住友フィナンシャルグループ<8316.東証>がSMBCフレンド証券を完全子会社化したのに続き、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306.東証>も三菱UFJ証券<8615.東証>を07年3月に完全子会社化する。銀行・証券のシナジー増大とともに、グループ外株主への収益の流出を防ぐのが狙いだ。次は系列証券3社(新光<8606.東証>、みずほ<非上場>、みずほインベスターズ<8607.東証>)を抱えるみずほフィナンシャルグループ<8411.東証>に注目が集まる。中堅・地場証券会社は単独でどこまで生き残れるのかが問われてこよう。(1)とも絡み、再編の動きはネット専業大手や既存大手3社にまで波及する可能性もある。
【山川清弘記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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