音楽配信の隆盛でまだまだ変わる音楽産業の未来 人工知能とVR機器が切り拓く音楽体験の未来像
また、技術の進歩などで増加している立体音響技術を用いた”空間オーディオ”も、対応曲の増加とともにニーズが高まってきており、イヤホン、ヘッドフォン、スピーカーのいずれにも進化の余地が生まれている。
しかし、技術革新による音楽市場の拡大は、こうした”録音原盤”の応用だけにとどまらない。音楽産業の原点を”実演”に見るならば、実演ライブをテクノロジーで拡大することにこそ、より多くの成長余地がある。
”ライブパフォーマンス”のDX化
音楽産業は録音原盤の販売とコンサートチケットの販売が、ほぼ拮抗している。PwCグローバルのレポートによると、2024年の録音原盤市場がおよそ250億ドルに対し、ライブチケット販売はおよそ240億ドル。年率4%台で成長すると予想されており、今後しばらくは両輪になっていく。
ところが国内を見ると、少しばかり状況が異なる。
ぴあ総研のレポートによると、日本国内のライブチケット販売は2020年以降の急成長に反し、2024年以降は年率0.9%という低成長が予測されている。一時的なものではなく、少なくとも2030年ごろまで続くとの予測だ。
これは音楽ファンの主体である若年層が日本では急減すると予想されている上、海外と比較した際にスタジアムやコンサート会場の規模が小さいなどといったこともある。それでも経済波及効果は大きいと経済産業省は見積もっているが、こうした国内の状況は新しいアプリケーションを生み出す土壌を作る可能性がある。
音楽ステージなどのライブチケットは映画やスポーツよりも単価が高く、また交通費・宿泊費や飲食、物販などに発展しやすいという。
一方で”実演”に参加できる人数が限られている(からこそ単価も高い)故に、市場の枠が限られていることも事実だ。楽譜の出版から録音原盤をメディアで複製しての販売へと向かったように、技術革新が”ライブ体験の複製”を実現するなら、そこにDX化の余地はある。
例えば5Gの普及は、より高い質の音楽体験をもたらすライブパフォーマンスの伝達を実現する新しいメディアフォーマットの誕生を促す可能性がある。Apple Vision ProやMeta QuestなどのVR機器で、家にいながらコンサート会場にいるような体験ができる日も来るだろう。
実際、ライブの臨場感を味わえるコンテンツも登場し始めているが、この技術やノウハウは、音楽ファンとアーティストの距離を縮め、物理的な制約を超えたファンコミュニティを生み出せるものだ。技術的なハードルは高いものの、その波及効果は計り知れない。
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