不登校の生徒だけではない、12人に1人が「通信制高校」を選択する本質的な理由 一人ひとりのニーズに合ったサポートが必要

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自分のテーマを発見するために、マイプロという個人探究の時間を継続的にとり、その成果を発表するマイプロアワードも実施してきました。これなどは以前紹介した渋谷区の例のように、全日制の学校にも広がっている取り組みです。

「20年間やり続けてきた中で、マイプロを通して才能を発見するケースも多くみてきたが、才能を発見するためには、科学的なアプローチで自分の特性・強みを知ることが欠かせない。困った子ではなく、困っている子という目線で温かく見守り、それぞれの立場の専門性を生かして、チームで生徒を支援していきます」と日野氏。

SNECに通ったことで自らの強みに気づき自立していく生徒たちも大勢います。その1人が亀谷銀海さん。彼は、中学に入学してから人とのコミュニケーションに悩みがあり、中学2年生で「自閉スペクトラム症」と診断され不登校に。

アーティスト・GINGAとして活動する亀谷銀海さん
(写真:明蓬館高校提供)

しかし現在は、アーティスト・GINGAとして活動しています。「通信制高校を選択したことで、人と比べなくてもいいんだと思えるようになり、心にも体にも余裕が生まれました。中学では不登校になり生きづらさを感じていましたが、好きなことを伸ばす明蓬館高校の教育方針で、自分の価値観も大きく変わりました」と言います。

サポート校の役割は、生徒一人ひとりの学びをサポートすることですが、学習支援だけでなく、その特性に合った個別支援を行うことが欠かせないのだと感じました。

しかしこれは、発達に特性のある子だけに求められることではないでしょう。ホームスクーリングが広がっているアメリカでは、個性に合わせた学習スタイルを科学的に提案するプログラムが充実しているそうです。

個別最適化という言葉が教育現場に浸透し始めていますが、日本でも発達に特性がある生徒だけなく、すべての子どもたちが科学的なアセスメントを受け、それぞれの得意を見つけていくことができたらいいのではと、日野氏の言葉を聞きながら感じました。

「全日制高校が逆に通信制高校から学び、今後巻き返しを図ってくるだろう。自分はそれを期待している」と日野氏。

多様な学びの場が広がり、最近はメタバースの学校も出てきています。子どもたちが生きる22世紀を想像し、これからの教育はどうあるべきなのかを考えたときに、それぞれの尊厳を守り強みを生かすというのは、キーワードの一つなのかもしれません。

(注記のない写真:zon / PIXTA)

執筆:教育ジャーナリスト 中曽根陽子
東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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