不登校の生徒だけではない、12人に1人が「通信制高校」を選択する本質的な理由 一人ひとりのニーズに合ったサポートが必要

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また、教育特区(教育関連の構造改革特区)により、株式会社立の高校の設置も認められ、イノベーター養成講座やeスポーツ、学校内コンテストなど、既存の全日制高校にはないプログラムを提供する学校が出現し、既存の一斉一律の学校教育に疑問を持つ生徒にとっての新たな選択肢の1つになっているようです。

角川ドワンゴが運営するN校・S校は、両校合わせて2万8942人の生徒が在籍(2024年5月1日時点)。通信制高校の一般化に一役買ったと言えるでしょう。高校の通信制の実施校は、ここ5年で210校から290校に急増していますが、その背景は、上記の理由のほかに、私立の全日制高校が通信制高校を併設するようになっていることも挙げられます。

こうした環境の変化もあり、最初から全日制ではなく、通信制高校を選択する生徒も増加しているのです。実際私の周りでも、公立高校の併願校として、全日制私立高校ではなく通信制高校を選択する例がありました。

通信制高校の卒業は簡単ではない!?

このように、拡大している通信制高校ですが、その仕組みや実態がよくわからないという人も多いでしょう。まず、基本的な通信制高校の仕組みについて見ていきましょう。通信制高校には、「広域通信制高校」と「狭域通信制高校」の2種類があり、入学できる都道府県の範囲が違います。

入学できる地域が3都道府県以上ある広域通信制高校は、私立校に多いです。キャンパスやスクーリング会場を複数用意し、全国から生徒を募集している学校もあります。一方、狭域通信制高校は入学できる地域が「学校のある県」と「隣接する1都道府県程度」に限られて認可されます。

全日制高校や定時制高校と同じく、所定の単位を取得して高卒資格を得られます。基本的に自宅などで個別に学習を進め、郵送やネットで各教科のレポートを提出、単位認定テストを受けることで単位を取得していきます。それ以外に、スクーリーングへの出席が義務付けられており、最低3年間以上在籍が求められます。毎日学校に通う全日制とは違い、個々の状況に応じて柔軟に学習できることがメリットです。

一方、卒業に関しては、必ずしも簡単ではありません。とくに公立の通信制高校は、学習サポートは手厚くないので、卒業率が50%を切る学校もあります。聞くところによると、地域の進学校が通信制を併設している例も多く、親としては通信制でもそこに通っていると言えばメンツが保てるので選択するが、実際卒業できずそのまま家にこもってしまうという事例もあるようです。

そもそも、自律的な学習は、生徒自身のモチベーションが必要ですし、中学校までに学習体験が少ない生徒にとっては、なおさら自力でレポートを提出して単位を修得するのは簡単ではありません。

そこで生み出されたのがサポート校でした。通信制高校の中には、独自に生徒の学習サポートを行うコースを併設しているところもありますが、多くは実施校がいくつかのサポート校と提携しています。

ただし、サポート校だけでは高卒資格が取れないので要注意。大抵はいずれかの学校と提携していますが、中には提携していないところもあるので確認が必要です。そこで25年間にわたり、この世界を見てきた明蓬館高等学校・校長で理事長の日野公三氏に、通信制高校やサポート校の今とこれからについて、聞きました。

この5年で急増する「サポート校」大手も参入

現在1500校以上あると言われるサポート校ですが、ここ5年で急激に増えています。

日野公三(ひの・こうぞう)
明蓬館高等学校 校長兼理事長
岡山大学法文学部卒業後、リクルートを経て2000年東京インターハイスクール、2004年アットマーク国際高等学校創立、理事長・校長に就任。2009年明蓬館高等学校を創立、理事長に就任。2012年から校長も務める。発達に課題のある生徒を積極的に受け入れる方針を掲げ、2013年にSNECを品川・御殿山に設立。以来、全国の主要都市にSNECを開設している
(写真:本人提供)
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