不完全であっても、イラン核合意は画期的だ 10年以上続いた交渉の歴史的転換点

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すなわち、イランは原子力を保有するが、兵器として利用しない。遠心分離機の回転数を低レベルに制限し、兵器として利用される可能性のある範囲未満に濃度を保ちつつ、濃縮ウランを核燃料に変えることができる。

ジェンキンス英IAEA大使(当時)は、EUの交渉責任者たちはイランの提案に感銘を受けたと公の場で語った。しかしブッシュ政権は、厳しい制裁や軍事対応も辞さずに威嚇すれば、イラン政府からより大きな譲歩を引き出せると説き、英国政府に圧力をかけた。

合意したことの意義

10年前に至ったはずの合意に比べると、今回の合意内容は見劣りする。これは、外野から大声を上げ始めたチェイニー元米副大統領、イスラエルのネタニヤフ首相らが心に留めておくべきポイントである。

今回の合意はNPTを強固にするばかりでなく、イランとの間に理解への道筋を開くことにもなるかもしれない。西アジアに蔓延している暴力を制御し、終わらせるためのあらゆる外交活動にとって、これは極めて重要なことである。

週刊東洋経済2015年8月8日・15日合併号

クリス・パッテン 英オックスフォード大学名誉総長

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Chris Patten

元英国保守党議員で最後の香港総督。欧州委員会外交専門部会委員、英オックスフォード大学総長を歴任。

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