事故多発「パーソナルトレーニング」見極めのコツ 61件が「治療に1カ月以上要した」、骨折事案も

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保険など何かあった際の保証制度があるかどうかも、聞いておいたほうがいい。「今はチェーン系のジムのほうが規模も大きい分、トレーナーの研修制度やケガをした場合の保証や保険関連もしっかりしているように思います」と岡田氏は話す。

とくに女性はセクハラ被害に遭うケースもあるので、そうしたリスクへの不安が大きい場合は、パーソナルトレーニングの仕組みがある大手ジムを選ぶのがよいという。

「大手のほうが何かあったときの相談がしやすく、施設の一角でトレーニングを行うので、ほかの利用者の目がある点でも安心です。個室の場合は注意が必要で、フリーランスの男性トレーナーから性被害に遭い、逃げられてしまったケースもあるようです。女性が男性を選ぶ場合は、そのメリットとリスクを理解したうえで契約しましょう。最近では、トレーナー1人に対し、3~4人の受講者で行う『セミパーソナルジム』という選択肢も増えてきています」

価格設定については幅が広く、高額だから質が高いともいえないが、安い価格ではよいトレーニングを受けられる可能性は低いだろうと岡田氏は言う。

「あまり予算が取れないならば、安すぎるジムに何度も通うよりも、信頼できるパーソナルトレーナーに1カ月に1回指導してもらうなどして、あとは自分でトレーニングするという方法が効果的ではないかと思います」

求められる「トレーナーの質向上」や「資格整備」

今後、事故を防止していくためには、トレーナーの資質向上が欠かせないと岡田氏は語る。

「これからパーソナルトレーニングが拡大していく中、運動に慣れ親しんでこなかった人や疾患を持つ人などはもっと流入してくると思います。トレーナーは、そうした方々も指導するための知識や技術が問われるでしょう。AED(自動体外式除細動器)を設置して事故発生時の訓練をする、医師と連携するなどの対策も必要です。トレーナーはトレーニングを通じて人の身体に成長の刺激としてストレスを与えているわけですから、プロとしてそのリスクを必ず想定すべき。ハラスメントの勉強など、学び続けることも大事です」

また、前述のように公的な資格はなく、その点に関して岡田氏は、国の介入も必要ではないかと話す。

「現在、NSCA、NESTAなどの有力な民間指導者資格はアメリカのものです。国内発ではJATIが最大規模でしょう。複数の団体が存在し、アメリカの資格が取れることが悪いわけではありませんが、日本の文化や習慣にマッチさせることも大切です。トレーナーを育成する有力な団体を絞り、日本の現状に合わせた業界ガイドラインや資格を作るよう、国が音頭を取ることも必要かもしれません」

現状、事故防止の基準整備が十分とはいえないパーソナルトレーニングだが、「健康維持には最適な選択肢の1つ」だと岡田氏は言う。筋トレは運動神経に自信がなくてもでき、とくにパーソナルトレーニングは、トレーナーがモチベーターになる面が大きく、継続しやすいからだ。トレーニングの目的を明確にし、メリットとリスクを理解したうえで、うまく活用したい。

東洋経済Sports×Innovationでは、スポーツや運動を「知る」「観る」「楽しむ」ことで社会・日常・心身にもたらされるイノベーションを発信しています。
國貞 文隆 ジャーナリスト

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くにさだ ふみたか / Fumitaka Kunisada

1971年生まれ。学習院大学経済学部卒業後、東洋経済新報社記者を経て、コンデナスト・ジャパンへ。『GQ』の編集者としてビジネス・政治記事等を担当。数多くの経営者に取材。明治、大正、昭和の実業家や企業の歴史にも詳しく、現代ベンチャー経営者の内実にも通じている。著書に『慶應の人脈力』『やはり、肉好きな男は出世する ニッポンの社長生態学』『社長の勉強法』『カリスマ社長の大失敗』がある。

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