宿題・テスト・通知表「全廃」の学校に起きた変化 変わりつつある「夏休みの宿題」の最前線
通知表をなくした代わりに、保護者との個人面談を年1回から2回に増やし、日ごろの授業や生活の様子を丁寧に伝えるようにした。そのかいあってか、改革当初に保護者から寄せられたような問い合わせや苦情はその後一切届かず、教育委員会もいったんは状況を静観しているそうだ。
業務負担は減るも、戸惑う教員たち
肝心の「改革の成果」について尋ねると、長井校長は「まだ劇的な変化はないのですが……」と前置きしつつ、こう続けた。
「先生の言うことを聞かずに暴れだす子が多少減ってきました。あとは最近、七夕の短冊を眺めていた時に気づいたのですが、『計算ができますように』『漢字が書けますように』といった願い事ではなく、「家族が健康でいられますように」といった内容が目に付くようになったなと。
目先の評価よりも、自分が本当に大事にしたいものに目を向ける子どもが増えてきたのかもしれません」
それにしても、ここまで大掛かりな学校改革を推し進めるモチベーションとは、一体何なのか。長井校長の穏やかな声色に、力強さがにじむ。
「今、全国の小中学校に不登校の子は30万人いて、教員の採用倍率も右肩下がり。学校に生徒も先生もいなくなるというのは、やはり学校のあり方の根本に問題があるからだと思っています。そういう目で現場を見ていると、変えなきゃいけないところがいっぱい、本当にいっぱい見えてくるんです」
改革の結果、テストの採点や通知表作成などの業務がなくなり、教員の負担も劇的に減った。だが、今まで実践してきた教育のあり方から180度転換するような方針に対して、先生たちからはいまだに戸惑いが寄せられ、一様の歓迎ムードではないという。長井校長は、「孤軍奮闘しております」と苦笑いしていた。
夏休みの宿題に代表される「学校教育の当たり前」を疑ってみる。大胆な教育改革は、そうした小さな一歩から始まるのかもしれない。
(AERA dot.編集部・大谷百合絵)
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