新幹線放火、対策のカギは「台湾」にあった "新幹線の父"の息子が事態を予見していた!?
当初の0系では強化ガラスを用いていたが、少しずつ改良が加えられ、現在はポリカーボネートなどの割れない素材が採用されている。
こうした万全の対策が、いざ不測の事態が生じると裏目に出てしまう。結果論ではあるが、ガラスが割れるような設計であれば、火災時の排煙が容易になった可能性はある。
広く世界を見渡すと、安全に対する取り組みの状況は日本と異なる。お隣りの台湾では、台北―左営間を走る高速鉄道に日本の新幹線システムが採用されている。高速鉄道車両「700T」は東海道新幹線「700系」をベースに開発されたものだ。
外観は先頭形状やカラーリングが異なるが、内装は一見すると東海道新幹線の車内にいるような感覚に陥る。2013年公開の日本映画『藁の楯』では、台湾新幹線の車両を東海道新幹線に見立てて撮影が行われたほどだ。
欧州流の設計思想を取り入れる
だが、車内をつぶさに観察すると、台湾新幹線には東海道新幹線にはないものがある。各車両には、一部の座席の窓と窓の間にハンマーが取り付けられているのだ。
台湾新幹線を運行する台湾高速鉄路の担当者は「火災などの緊急時には窓をハンマーで割って脱出してもらう」と説明する。
台湾新幹線の車両は日本のものが採用されているが、仏TGVや独ICEなど欧州流の設計思想も取り入れられている。そのため、日本と台湾の新幹線は細部で設備の違いが生じている。
新幹線の生みの親といわれる名技術者、島秀雄氏の次男である隆氏は、自身も鉄道技術者の道を歩み、東北新幹線や上越新幹線の車両設計を担当。台湾新幹線プロジェクトの指導にも当たってきた。そんな同氏が2004年の学会誌の対談企画で、台湾新幹線の火災対策について次のように述べている。
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