トランプがユダヤ系富豪から巨額献金される事情 タブーを破って米大使館をエルサレム移転

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

入植地ベイトエルで1996年12月、母親と息子がユダヤ教のハヌカ(光の祭り)の最中にパレスチナ過激派のテロで射殺されました。葬儀にはネタニヤフ首相が参列しました。私は翌年1月、妻子を殺された入植者の男性の自宅を訪ねて心境を聞きました。取材後、地中海を遠望できる丘の上の入植地内を見て回っていると、ネタニヤフの義弟ハギ・ベンアルツィ氏と出会いました。彼は「ここにまた新しい入植地をつくる。もちろんアラブの土地だったさ」と平然と言い放ちました。

ユダヤ人の社会は小規模です。有力者同士はたいがいどこかで接点があります。ネタニヤフと入植者の義弟、大使館移転を進めた大使は、西岸の入植地でつながっていました。

エルサレム「神殿の丘/聖域」の岩(黄金)のドーム(写真:オリーブ山から筆者撮影)

カジノ王アデルソンのトランプ支援

「カジノ王」アデルソンは開館式典で、最前列中央に妻と着席していました。米西部ネバダ州のラスベガス・サンズ・コーポレーション会長です。米誌「フォーブズ」の億万長者番付で世界第8位にランクされたことがあります。共和党の有力政治家はアデルソン詣でを欠かせません。イスラエルでネタニヤフ支持の新聞を発行し、右派長期政権を支えました。無料紙です。リベラル派は「アメリカで安全、快適に暮らす大富豪が、中東でアラブ人と生きていくわれわれの政治を左右するのはおかしい」と不満を口にしていました。

2016年の大統領選挙でアデルソンは当初、反ユダヤ主義者にも人気のあるトランプへの支援に慎重でした。トランプは同年3月、白人至上主義団体クー・クラックス・クラン(KKK)の元最高幹部からの支持表明を直ちに拒否しなかったことで批判を浴びていました。アデルソンは秋以降、巨額の政治資金を追加支援しました。トランプへの最大の「メガドナー(大口献金者)」です。彼の支援なしではトランプの当選は難しかったでしょう。

アデルソンはシンガポールのリゾートホテル「マリーナ・ベイ・サンズ」も経営していました。シンガポールで2018年6月におこなわれたトランプと金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の米朝首脳会談の際、金正恩は同ホテルに案内されています。トランプは、自分と手を打てばピョンヤンもシンガポールのように繁栄すると印象付けたかったのでしょう。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事