株高なのに円安の恩恵が広がらないのはなぜか 岸田政権の大きな政策ミスを教訓にできるか

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だが、2024年度の春闘におけるベースアップは大企業を中心に3%台半ばを実現しており、2024年の秋口までには賃上げの影響が本格化、実質賃金は増加に転じるとみられる。さらに、6月から家計の可処分所得を増やす定額減税の規模は約3.3兆円で、これは可処分所得の約1%に相当する。実質賃金の上昇とあいまって、2024年後半から個人消費は回復に転じるだろう。

岸田政権は、2022年から2~4%台での物価高が続く中で、生活必需品の値上がりによる家計の購買力の目減りに対して、対応策も講じている。電気・ガス、ガソリン価格抑制のための、企業への補助金支給が主たる手段になった。ただ、これらで価格上昇が抑制されても、生活必需品全般の価格上昇による実質購買力の目減りを補うまでには至らないので、不十分な対応だったと言えるのではないか(8月から電気などの価格抑制策が再開するが)。

もっと早く大型減税含めた財政政策を始めるべきだった

また、防衛費増額と事実上の増税を行うことを2022年末に先んじて岸田政権が決めたこともあり、いずれ増税が強化されるのではないかとの懸念がメディアを通じて広がり、これが家計の支出行動を抑制し続けたと筆者は考えている。

仮に、大型減税などの財政政策が経済安定化政策として、2023年早々に始まっていればどうなったか。「家計の円安への不満」は和らぎ、2023年後半以降も個人消費の回復が続いていただろう。

岸田政権が、こうした政策を採用しなかった政治的な理由は、定かではない。2023年には名目GDPが600兆円近くに増えており、これに応じて「公的部門の所得」である税収も過去最高水準に増えた。

税収と企業利益は過去最高水準に増えるいっぽうで、家計部門の所得回復が遅れるのはやむをえない。ただ、円安が家計購買力を大きく目減りさせたことへの対処策として、経済安定と再分配政策の観点から、若年低所得世帯に対する広範囲な減税、給付金支給による可処分所得の底上げがベストの手段だったのは明らかだろう。

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