ソフトバンク元副社長が喝「老害」の無意味な悪癖 若者との仕事では「致命傷」になりかねない

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にもかかわらず、なぜ日本企業は諸外国から呆れられるほどに決定が遅いのでしょうか?

私の見るところ、それは日本企業に特有の、「救い難い完璧主義」にあるように思えます。「完璧主義」というと聞こえがいいですが、言い換えれば、それは「責任回避」と同義語です。

ゼロから出発してなりふり構わず成長を求めた高度成長時代と異なり、ここ30余年の日本では、「どうすれば失態をおかさず、誰からも責任を追及されないか」ということばかりが、いつも真っ先に考えられているかのようです。

いつの間に日本はこんな国になってしまったのかと、慨嘆してみてもあまり意味はありません。昭和後期の高度成長時代に多くの日本人が到達した生活水準は、そんなに悪いものではなく、人々のハングリー精神はもはや失われたのだと思います。ですから、今は、現在の生活水準を守るのに汲々としているに過ぎないのでしょう。

この過程の中で確立した日本型の経営組織の中で、「役職社員」という地位を得た人たち(つまり多くの決定権を手中にした人たち)は、危険を冒すことなくその地位を守り、その地位が自動的に約束してくれる「その次のやや上位の地位」を心待ちにしているかのようです。この人たちにとっては、スピードよりも安全の方がはるかに重要なのは、当然のことなのかもしれません。

「とりあえず一呼吸置く」をやめる

ですから、この人たちがその致命的な問題点に気づく前に、この人たちに「決定と行動のスピードアップ」を期待するのは、もともと無理なのだと思います。

しかし、そういう人たち(それは本稿を読んで下さっているあなた自身かもしれません)が、少しだけ視野を広げて、周りを見て頂ければ、「諸外国並みのスピードで決定し行動せねば成り立たない」仕事もそこここに増えているのに気がつくでしょう。

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ですから、あなたが今携わっていることは、そういう仕事かもしれないということをまずは考えておいた方が良いでしょう。この点を意識し対応するのは、そんなに難しいことではありません。

「とりあえず一呼吸おく」という、これまでに身に染み付いた無意味な悪癖を、とりあえず綺麗さっぱりと捨て去るだけで良いのです。

これまでなら、「この議論の続きは来月の会議で」と言ってきていたのを、「今日は残念ながら結論が出なかったので、続きの議論は明日。それが無理なら明後日。それも無理なら一週間後に臨時会議を開いて」と言い換えるだけで、全ては見違えるように良くなるはずです。

あなたが「スピード」の重要性に目覚めて、何事も「速く、速く」と心がける姿勢を示せば、少なくともあなたは「ウザい年寄り」と陰口を叩かれることはないでしょう。

あなたより若い人たちの体内クロックは、言い換えれば、彼らの生活と仕事のリズムは、概ねあなたより速いテンポを刻んでいるのが普通ですから、その程度がちょうど良いのです。

松本 徹三 ソフトバンク元副社長、ORNIS株式会社会長CEO

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まつもと てつぞう / Tetsuzo Matsumoto

1939年東京生まれ。京都大学法学部卒業。伊藤忠商事(米国会社エレクトロニクス部長、東京本社通信事業部長等)、クアルコム(米国会社上級副社長、日本法人社長)、ソフトバンクモバイル(取締役副社長)で通算51年間勤務。その後7年間は海外で仕事をした後、日本全国のレーダー施設で取得した海面情報を様々な需要家に提供するORNIS株式会社を82歳で創業。

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