任天堂「あえての技術劣化」が業界に与えた好循環 ゲーム業界が「30兆円市場」に成長できた訳

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「Xbox」や「プレイステーション」は、映像が映画のような世界になっていき、どんどんリッチですごいものを作ってエスタブリッシュしていく。一方の任天堂は、ハードウェアの性能では追いつくことができない。

そこで任天堂は、差別化をはかりました。ファミリー向けに舵を切り、「みんなと遊ぶ」というインスパイアリングに優れた遊び方の提案をしたわけです。玩具屋としての発想で、遊ぶシーンを想像しながら、面白いゲームを作っていった。DSに続いてSwitchもそうした機種でした。

任天堂のゲームは、フレンドリーですよね。画像も荒いし、ちょっと古めのゲームも多いのですが、やっぱり「遊び」に近い。玩具のように、手に取って直感的にわかるようなすごさがあります。そのような手触り感のあるものを作るというところに、僕は、任天堂のすり合わせ技術(前編を参照)の粋たるものを見る思いです。

任天堂はゲーム人口をもう一度掘り起こした

コロナの後、やはりリアルの場で会うことが大事だという感覚が生まれましたし、任天堂の打ち出す遊び方は、今後も重要なものであり続けると思います。

ソニーは映画を売るやり方、マイクロソフトはPCベースでOSを売るやり方。そこに、任天堂という玩具的な第三極があることは、世界のゲーム業界にとって大事なことと言えるでしょう。

任天堂が弱くなると、逆に、他社も踏み切れなくなるということが起きるのではないでしょうか。任天堂が家庭用ゲームというファミリーゾーン、低年齢層ゾーンで、最初のゲームユーザーを作ってくれるからこそ、「Xbox」や「プレイステーション」などにユーザーが流れていくわけです。

「Wii」と「ニンテンドーDS」がなければ、ゲーム業界の30兆円市場は存在しなかったかもしれないとすら思います。次は何ギガだ、何テラだと映像勝負の業界になっていれば、ユーザーは離れていったでしょう。任天堂は、低年齢層への間口を広げて、ゲーム人口をもう一度掘り起こしたのです。

子供は、「アンパンマン」のように線の少ない漫画を好みます。大切なのは、キャラクターがいて、その物語をたどるということです。むしろ解像度を荒くすることが必要であったりもするでしょう。ゲームは、「優しいリアル」でもあるのです。

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