声のため去勢まで…歌手たちの知られざる悲劇 「オペラ大図鑑」でたどるオペラの壮大な歴史
オペラ界のアイドルたち
オペラとディーヴァ崇拝は切っても切れない関係にある。何世紀にもわたって、類いまれな声と強烈な個性を備えたごく少数の歌手によって、オペラのあらゆる情熱やドラマが具現化されてきた。そして、オペラファンはいつもそうした歌手たちに興奮し、称賛し、熱狂してきた。舞台の上でも、舞台以外でも、オペラ界のアイドルたちは緊張に満ちたドラマへの愛とともに、オペラという芸術形式全体を活性化してきたのだ。
伝説的なオペラ・スターといえば、ほとんどがディーヴァ(イタリア語で女神)と呼ばれるソプラノ歌手だが、テノール歌手、オペラ創成期にはカストラートだったこともある。誰もがオペラの神秘的な魅力を人々の記憶に長く留めるうえで中心的な役割を果たしてきた。そこにはどんな秘密があるのだろうか?
並外れた高音はほぼ必須の条件で、ソプラノやテノールが美しく長く持続させて歌うハイCは、聴衆に衝撃的な感動を与える。トップに君臨するオペラ歌手たちは役者でもあり、説得力ある歌唱によって役に命を与える。しかし、同じくらい重要なのは、華やかで気まぐれな個性だ。多くのディーヴァが最高のオペラ作曲家や指揮者のミューズになることに不思議はない。