北海道新幹線「札幌延伸延期」で泣く人、笑う人 工事で死亡事故多発、安全とスピードの両立を
その日の午後、有識者会議が開催された。今後の工程短縮策を検証したほか、新たな開業目標をどのように設定するかについても話し合われた。また、遅れの大きな要因となっているトンネル難工事の対策を進めるため、大手ゼネコンなどとワーキングチームを立ち上げたことも報告された。
会議後、国交省鉄道局と鉄道・運輸機構の担当者が取材に応じた。まず気になったのは、4年程度遅れるということは、そもそも2035年度の開業目標を5年前倒しする計画に無理があったのではないかということだ。この点について国交省は「できるという判断だった」。また、鉄道・運輸機構は「発生土の受け入れ体制などの条件が整えば5年前倒しはできると判断した。巨大な岩塊については当時想定していなかった」と述べた。
新たな開業時期は「幅を持たせた設定」?
比羅夫工区では、今回のシールドマシンの停止中に人工的な振動を用いて地質を調査する弾性波探査を行ったところ、進路上に9カ所で岩塊が確認された。これらをボーリング調査すると6カ所は規模的に掘削可能だが、3カ所はシールドマシンが停止するおそれがあり、除去の必要があることも判明した。ルート選定前にこのような状況がわかっていればルート変更などの手段も取れたはずだ。
着工前の地質調査ではわからなかったのだろうか。この点について鉄道・運輸機構の担当者は「ボーリングをきめ細かく行えば技術的には可能」と述べた。だがきめ細かく調査を行えばその分だけコストは跳ね上がる。要は現実的な地質調査としては取りうるべき方法ではなかったということだ。
新たな開業時期について早期に示してほしいとの声が地元自治体や経済界から上がっている点については、国交省の担当者は「次の目標は何年度と決めるかどうかも含め、今後ご議論いただく」と説明。「○年度」ではなく「○~○年」と幅を持たせた目標設定となる可能性も示唆した。
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