北海道新幹線「札幌延伸延期」で泣く人、笑う人 工事で死亡事故多発、安全とスピードの両立を

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ところが、2020年10月に風向きが変わった。北陸新幹線・金沢―敦賀間の工事が計画よりおよそ1年半遅れており、2022年度末の開業には間に合わないことが明らかになったのだ。

その後の調査で、2019年10月の時点で工事現場サイドが「遅延回復は困難」と報告していたものの、鉄道・運輸機構の大阪支社は本社に対し、「開業に間に合う」と報告していたなど、機構内の連絡やチェック体制に不備があったことが明らかになった。結局、北陸新幹線の敦賀開業は1年遅れの2024年3月となった。開業が間近に迫った段階での工事遅れの発表は地元の盛り上がりに冷水を浴びせた。

北陸新幹線の反省を生かし、北海道新幹線は早い段階で精査の作業を行うべく、国は北海道新幹線・新函館北斗―札幌間の整備に関する有識者会議を2022年9月に立ち上げた。

会議を重ねるにつれ、北海道新幹線でも工事が遅れ、工事費用が膨らんでいる実態が明らかになってきた。渡島トンネルでは掘削に伴い発生する土砂の受け入れ先の確保が難航しているほか、地質的に軟弱な区間が多く追加のトンネル補強工事が必要になり、現状で3〜4年の遅れが発生しているというのだ。

北海道新幹線 国縫トンネル
2022年10月に貫通した北海道新幹線・国縫トンネルの長万部側坑口=2022年11月(記者撮影)
北海道新幹線 豊野トンネル 貫通
北海道新幹線・豊野トンネル貫通の瞬間=2023年3月(記者撮影)

「5年前倒し」無理はなかったか

一方で、羊蹄トンネルの比羅夫工区では、軟弱な地質とは逆の事象が起きていた。シールドマシンの前方に10m四方に及ぶ巨大な岩塊が出現し、撤去作業に2年半を要したほか、シールドマシンの刃の交換などにより現時点で4年程度の遅延が発生しているという。

有識者会議は工程の工夫などにより工事の遅れを少しでも軽減すべしという方向性を2022年12月にまとめたが、鉄道・運輸機構は「有識者会議で議論されたさまざまな工程短縮策をもってしても一定程度の短縮にとどまる」と結論づけた。そして5月8日、「2030年度末完成・開業の目標達成は極めて困難」と国に報告した。新たな開業時期については「現時点で具体的な時期を示すことは技術的に困難」としている。

5月10日の定例記者会見で斉藤大臣は、鉄道・運輸機構から報告を受けたことに対して「この報告内容が合理的なのか、講じることができる方策がないか、有識者会議を開催しながら精査を進めていく」と話した。

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