中山秀征『夜もヒッパレ』に見たプロの仕事術 安室奈美恵らと作り上げた「妥協なき華やかさ」
「秀ちゃんの注目ボード」というコーナーを一緒に担当していたこともあり、「あの安室ちゃんの新人時代って、どんな感じだったの?」と聞かれることも多いのですが、もう、最初から「別格」でした。
はじめてSUPER MONKEYʼSのパフォーマンスを見たときは「衝撃」の一言。まだ大ヒット曲こそありませんでしたが、歌もダンスもあの時代では群を抜くクオリティでした。
特にセンターの安室さんを見た共演者・スタッフの多くが「とんでもない大物になる」と"確信に近い予感"を興奮気味に語っていたのを覚えています。
安室奈美恵さんの天才的な「間」
実は彼女は「トークの天才」でもありました。といっても「しゃべりで笑いを取ってやろう」なんて野心は1ミリも持っていません。彼女の"何気ない一言"になぜか笑ってしまうのです。
たとえば「安室ちゃん、今日は何で来たの?」と聞くと「電車!」と返してくる。文字にするとなんてことはないこのやり取りも、彼女の"間"が抜群だから思わず笑ってしまいます。
しかも最後に、「ヒデちゃ〜ん、東京の地下鉄って複雑すぎてわかんないよ〜」なんて一言を加えるだけで、その言葉が、なぜか立派なオチになってしまうのです。
しゃべりの"間"が面白いのは、ミュージシャン特有のスキルなのかもしれません。ただ彼女は、その"間"が「天才的なレベル」でした。
しゃべらないで、「んー」と言っているだけでも周りが彼女に期待し、次の発言が待ち遠しくなってしまう。
そんな能力を傍で感じていたので、本番で突然、安室さんにオチのセリフを任せる、なんてこともよくやっていました。
彼女はヒヤヒヤしていたかもしれませんが、僕や他の出演者、スタッフにも「安室ちゃんなら、いつ何時、どんな話題を振っても大丈夫」という安心感があったので、台本通りではなくてもカットされることはほぼありませんでした。
突然振られて応える安室ちゃんの一言にスタジオ中が大爆笑、そこにDJの赤坂泰彦さんがカットインして……。天才的で唯一無二の、不思議な魅力の持ち主でした。
安室さんも、MAXも、安室さんの後を引き継いだ知念さんも、皆さんに共通していたのは、歌とダンスはハイレベルなのに、感覚はいつまでも素朴で自然なところ。
僕のことも「芸能界の先輩」というより「近所のお兄ちゃん」くらいの感覚で接して、いつでも「ヒデちゃん、ヒデちゃん!」と呼んで慕ってくれていました。「ずっとテレビで見てたし、ヒデちゃんは『ヒデちゃん』なんだよね!」と。
どんなに売れっ子になっても業界ズレしない彼女たちの"自然な振る舞い"は、時に緊張感も漂うスタジオの空気をいつも和ませてくれました。
実は、楽しい番組を作るためにムードメーカーは欠かせない存在です。彼女たちの振る舞いも、立派な「プロの振る舞い」だったと感じています。
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