「柏」「川越」戦略地域でも閉店強いられるヨーカ堂 行ってわかった、首都圏・駅前でも苦戦の理由

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4月の平日夕方18時前、記者も実際に足を運んでみた。駅は帰宅客で混雑し始めており、駅前スーパーにとっては1日の中でも忙しくなる時間帯である。

まず、商店街側のドアから入ってすぐのエスカレーターを降り、地下1階の食品売り場に向かった。什器や内装の汚れ、天井の低さから多少のノスタルジックさは感じるものの、肝心のお客の数は他チェーンと遜色ない水準だった。客層は老若男女問わず、ファミリー客の姿も多い。

記者以外客が1人もいなかった肌着フロア

しかしフロアを上がるにつれ、状況は変わる。中でも深刻だったのが衣料品売り場だ。1階の服飾雑貨売り場には食品購入ついでに訪れる客が常時5人ほどいたものの、2階、3階と上がるごとに客は減り、「肌着のフロア」と書かれた4階には終始、記者以外1人も客がいなかった。

上層階でもブックオフには多くの客がおり、賑わいがあった(記者撮影)

駅から徒歩3分、商店街に面する好立地の柏店はなぜ苦戦を強いられているのか。1つ挙げなくてはならないのは、リストラが後手に回っていたということだ。

ヨーカ堂の祖業でもある衣料品は、専門店やECの台頭で慢性的な赤字が続いており、昨年3月、ついに2025年度末までに直営販売からの完全撤退が公表された。それまでも中期経営計画のたびに直営衣料品売り場縮小やテナント化の方針が打ち出されていたが、柏店全8フロアのうち、3フロアを衣料品が占め、その多くが直営売り場であることを考えると、どこまで過去の方針が徹底されてきたかは疑問だ。

同じ上層階でも、衣料品と対照的なのはさらに昇った6階だ。中古本チェーンの「ブックオフ」がフロア全体に出店しており、柏店の中で食品売り場に次ぐ賑わいを見せている。

記者が訪れたときも、商品が入ったクリアケースを前に談笑するサブカル系サークルと見られる若者や、帰りがけにビジネス書や参考書、漫画を選ぶサラリーマンや学生が多く見られた。トレーディングカード売り場中央に設けられた遊戯スペースは、小中高生や大学生で常に満席で、館としてのポテンシャルの高さを感じた。

柏店4階の展示スペースには出店して間もない頃の様子を伝える写真が飾られている(記者撮影)

柏市の商工観光課の担当者も「駅周辺の家賃は年々上昇しており、空きテナントもすぐに埋まってしまう」と話す。もしヨーカ堂が早期から抜本的な衣料品売り場の縮小、テナントの誘致を進めていれば、館全体の集客力・収益性を改善させ、撤退にまで追い込まれることは防げたかもしれない。

次に取り上げるのが、埼玉県川越市にある「イトーヨーカドー食品館 川越店」だ。

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